研究課題/領域番号 |
24580087
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
小滝 豊美 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫成長制御研究ユニット, 上級研究員 (20391550)
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研究分担者 |
品田 哲郎 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30271513)
志賀 向子 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90254383)
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キーワード | 幼若ホルモン / 頸吻群 / カメムシ目 / 卵巣発育 |
研究概要 |
本研究は、カメムシ目昆虫に対する制御剤の開発を目指して、セミ類におけるJHを解明するものである。セミ類は稲作の重要害虫であるウンカ・ヨコバイ類に近縁なので、ウンカのモデルとしてきわめて有用であり、ウンカ・ヨコバイ類におけるJHの解明に貢献すると考えられる。 アブラゼミおよびクマゼミから幼若ホルモンを生産する内分泌器官であるアラタ体を取り出してin vitroで培養した。アラタ体生産物には、想定された構造を有する合成品とODSカラムを装着したLCにおける挙動が一致しないものが含まれ、これまでの想定とは異なる構造をもった生産物が存在することが示された。H24年度にキラルカラムを用いた分析では、想定される分子であるJHSB2と溶出時間が一致するものが認められたが、今年度ODSカラムにおける挙動は一致しなかった。したがって、昨年度アラタ体生産物の一つがJHSB2であると結論したが、それは正しくなかったと判断される。H26年度において、さらに可能性を広げて、予測される構造を持つ候補物質を網羅的に合成し、2つのカラムでの挙動をアラタ体生産物と比較する予定である。 JH活性検定系を確立するため、検定する物質を注射し、その後卵巣発育を観察する方法を検討した。羽化直後のセミ成虫を解剖したところ、一部の卵母細胞への卵黄蓄積が認められ、すでに卵巣発育は開始されていると考えられた。その後卵巣は速やかに発育し、羽化後4.5日経過すると、卵殻を持った卵が卵巣小管内に認められた。羽化の翌朝のメス成虫に対するJHSB1注射により、卵巣の発育が処理量に応じて促進されることが示された。このことから、候補物質の注射とその後の卵巣発育状態の観察から、セミにおけるJH活性検定が可能と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セミ類成虫が夏の比較的短期間にしか地上に出現しないことから、年度毎に段階的に実験を遂行する研究計画は立案していない。これまでの2年で、JH活性検定に一応の目途がついたので、おおむね順調に予定した実験を進めていると考えられる。ただし、アラタ体生産物が当初の想定以外の構造を持つことが明らかになったので、構造として考えられる想定を拡げて、網羅的な化合物ライブラリを作る必要が生じた。そのため最終年度で必ず構造が解明可能か、不明確な部分が生じたことは否定できない。従って、実験の効率化が必要である。その方法は、「今後の研究の推進方策」で述べる。
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今後の研究の推進方策 |
セミ類のJHが当初の想定とは異なる構造をもつ物質であることが明らかになったので、より多くの構造を含む化合物ライブラリを作り、その中から天然物と同じ構造を有するものを絞り込む。そのため、より効率よくJH活性を検定する手段が必要である。その一つとして、JH誘導性遺伝子を培養細胞に導入して、その発現量を測定する、in vitroでの検定法の可能性を検討する。この方法が可能になれば、セミ成虫がいない時期にも、JH活性検定が可能になるため、効率よく事件が進むことが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
セミの採集や解剖、実験補助のためアルバイトを雇用したが、当初の予定より勤務可能な日が少なく、人件費が計画通り消化できなかった。実験の内容が、試薬類をあまり必要としないものに偏ったので、消耗品類の購入額が少なく、結果として物品費の使用額が計画よりも少なくなった。 26年度は、セミ成虫が出現する2ヶ月間、非常勤職員を採集や実験補助にあてて、実験の効率化を図ることから、人件費は予定通り消化できる見込みである。また、実験内容に当初計画より多くの分子生物学的な手法を取り込むことから、昨年度から繰り越した物品費相当額も、関連試薬購入の購入に充てて、全体として交付された研究費を過不足なく使用する見込みである。
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