研究課題
【研究1】ダイズの異なる生育ステージにおける各器官のイオノーム変動当初は北大植物園に生育する植物種の葉におけるイオノームの季節あるいは葉零による変動を観察することを計画したが、実験精度の問題から断念し、ダイズを用いた栽培試験に切り替えた。葉に注目すると、R1期(開花始)からR7期(成熟初期)に生育ステージが進むことにより窒素施肥条件に関係なく窒素、リン、カリウムおよび銅の含有率は半分以下に低下した一方、その他の元素では上昇が認められ、特にモリブデンで著しかった。逆に根粒や茎ではモリブデン含有率がR7期でR1期と比べて著しく低下した。さらにR1期の根粒のモリブデンに注目すると、窒素栄養条件の良い順(硫安区>堆肥区>無窒素区)に含有率が低く、根粒菌の窒素固定に伴うモリブデン要求が他器官へのモリブデン分配を制限していることが示唆された。本研究の内容をまとめ国際学術雑誌に現在投稿中である。【研究2】異なる土壌環境で生育する植物とその土壌の分析異なる土壌環境で生育する複数の野生植物種と、その生育土壌の分析を昨年度に引き続き行った。土壌環境間での元素含有率変動を植物葉と土壌で比較したところ、多くの元素において植物葉における変動が土壌における変動を上回った。これらの元素では、土壌における当該元素の抽出態濃度に加え、土壌中の他の元素や土壌物理化学生物性、体内での元素バランスなどの複合要因により集積が影響を受けている可能性が示唆された。それぞれの元素について含有率の植物-土壌間相関を調べたところ、相関が見られたケースは一部の植物種・元素に限られたが、系統学的に近い種では類似する傾向も見られた。例えばアルミニウムについては、単子葉類やキク類では植物と土壌の間にほとんど相関は見られないが、バラ類では複数の植物種で正の相関が認められた。これらの研究で得られた成果は日本土壌肥料学会本大会で発表した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画から変更は一部あったものの、その代替試験を行うなどして実験はほぼ順調に進んだ。成果の公表については、【研究2】の課題に関して国際学会や国際学術情報誌への発表が達成できなかった一方、【研究1】の前年度までの研究成果についてフランスで開催されたThe Eleventh Keele Meeting on Aluminiumで発表することができた
本年度達成できなかった【研究2】の課題に関する国際学会発表に関して、27年度にオランダで開かれるRhizosphere 4 congressにて発表する予定である。
26年度に異なる土壌環境で自生する各種植物の分析を終了させ、国際学会での発表を予定していた。しかし、サンプル点数が多く分析に時間を要したため予定していた国際学会での発表ができなくなった。そこで、別に開催される国際学会での発表を行うこととしたが、27年度に開催されるため、その旅費の未使用額が生じた。
分析結果をまとめ、27年度の6月にオランダで開催されるRhizosphere4 congressで発表することとし、未使用額の185,828円はその経費にあてることとしたい。
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Journal of Experimental Botany
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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