研究課題/領域番号 |
24580091
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
下嶋 美恵 東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 助教 (90401562)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 植物脂質 / 貯蔵脂質 / トリアシルグリセロール / リン欠乏 |
研究概要 |
バイオディーゼルや有用脂肪酸の原料となる植物の貯蔵脂質(トリアシルグリセロール, TAG)は、種子に多く含まれており、デンプンが主要貯蔵形態である葉や塊茎・塊根にはほとんど含まれていない。しかし、バイオマスが大きい葉や塊茎・塊根で油脂を蓄積できれば、新しい油脂原材料として本格的な実用化が期待できる。研究代表者らはこれまでに、栄養欠乏、特にリン欠乏生育時の植物の葉や根では、デンプンだけでなく油脂も蓄積すること、さらにデンプンを蓄積しない変異体ではこの油脂蓄積がより顕著であることを発見した(特許出願済み)。本研究では、特に植物の根においてデンプン量と油脂量を巧妙に制御しているしくみを解明し、種子ではなくデンプン貯蔵組織であるイモにおける油脂の蓄積をめざす。平成24年度は、リン欠乏時の根で油脂(TAG)を蓄積するシロイヌナズナ変異体の単離を試みた。具体的には、リン欠乏時に葉と根で発現上昇する遺伝子のプロモーターおよびTAG生合成の主要酵素遺伝子を用いて、リン欠乏時の根でTAGを蓄積する変異体を作製した。プロモーターには、これまでに研究代表者らが解析を行ったリン欠乏応答プロモーターであるMGD2およびMGD3プロモーターを用いた。これらのプロモーターは、リン欠乏時に特に根で強く発現することがわかっている。また、発現するTAG生合成の遺伝子は、シロイ ヌナズナのDGAT(diacylglyerol acyltransferase)1, 2およびPDAT(phospholipid:diacylglycerol acyltransferase) 1を用いた。上記すべての植物形質転換用のベクター作製および植物の形質転換は完了し、DGAT1導入形質転換体については貯蔵脂質含量についても解析を終了した。その結果、少なくとも葉においてはこの発現系の効果を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、既知のプロモーターとTAG生合成系主要遺伝子の組み合わせでの形質転換体作製および解析は予定通り進んでおり、顕著な成果もあがっているが、次世代シークエンサーを用いた、新規プロモーター・遺伝子の探索については遅れているので、上記のような評価となった。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) リン欠乏時の根で油脂(TAG)を蓄積する変異体の単離 平成24年度に作出したシロイヌナズナ形質転換体の脂質解析を順次すすめる。また、TAG生合成に関わる複数遺伝子を同時に導入することで、蓄積量を上げることができる可能性もあるため、合わせて形質転換体の作出に着手する。 (2) リン欠乏時のシロイヌナズナ根における網羅的遺伝子発現解析 固形培地を用いた生育では、サンプリングの際に根に傷害ストレスが加わり、純粋にリン欠乏時の遺伝子変化を見ることができないため、水耕栽培の系を立ち上げてから解析を行う。リン欠乏時のシロイヌナズナの葉における次世代シークエンサーを用いた遺伝子発現は解析済みである。同様にリン欠乏時の根における遺伝子発現解析を行い、葉と根における発現データを比較解析することで、リン欠乏時のデンプンおよびTAG蓄積に関わる新規遺伝子を絞り込む。候補遺伝子は、ノックアウト変異体、過剰発現体の作製・解析を行うことで、リン欠乏時のTAGおよびデンプン蓄積への関与を調べる。また、リン欠乏時のシロイヌナズナの根で特異的に強く発現するような遺伝子プロモーターを探索する。 (3) リン欠乏時特異的ににデンプンが蓄積しない変異体の単離 平成25年度前半のうちに野生株に変異原処理し、後半にはスクリーニングを開始できるように準備をする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に計画していた次世代シークエンサーを用いた遺伝子発現解析を実験の都合上延期したため、その費用が平成25年度に持ち越しとなった。未使用額は、同解析の費用として使用する予定である。
|