研究課題/領域番号 |
24580091
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
下嶋 美恵 東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 助教 (90401562)
|
キーワード | 植物脂質 / 貯蔵脂質 / トリアシルグリセロール / リン欠乏 |
研究概要 |
バイオディーゼルや有用脂肪酸の原料となる植物の貯蔵脂質(トリアシルグリセロール, TAG)は、主に種子に多く含まれており、通常の場合、葉や茎、根にはほとんど含まれていない。そのため、バイオマスが大きい葉や根に油脂を蓄積できれば、新しい油脂原材料として本格的な実用化が期待できる。研究代表者らはこれまでに、三大栄養素の1つであるリンが欠乏した生育条件下では、通常微量である油脂が顕著に蓄積すること、さらにデンプンを蓄積しないシロイヌナズナ変異体ではこの油脂蓄積がより顕著であることを見出した。本研究では、特に植物の根においてデンプン量と油脂量を巧妙に制御しているしくみを解明し、種子ではなくデンプンの主要貯蔵組織であるイモにおける油脂の蓄積を目指している。平成24年度は、リン欠乏時の根で油脂(TAG)を蓄積するシロイヌナズナ変異体の単離を行った。具体的には、リン欠乏時に葉と根で発現量が上昇する遺伝子のプロモーターの制御下で、TAG生合成の3つの主要酵素遺伝子を発現させ、リン欠乏時の根でTAGを高蓄積する可能性のある変異体を作成した。用いた3つのTAG生合成遺伝子のうち、DGAT1(diacylglycerol acyltransferase 1)を導入した形質転換体については単離が終了し、油脂含量を調べた。その結果、少なくとも葉の油脂含量が増加していることを確認した。平成25年度は引き続き、DGAT2およびPDAT1 (phospholipid:diacylglycerol acyltransferase)を導入した形質転換体の単離を行い、それらの油脂含量を調べた。その結果、PDAT1導入形質転換体において葉における油脂含量の増加を確認することができた。また、野生株と比較して、いずれの形質転換体においても顕著な生育遅延や根の伸長阻害は見られなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、既知のプロモーターと3つのTAG生合成主要遺伝子の組み合わせでの形質転換体の単離は終了し、葉における油脂含量の増加は確認できたが、新規プロモーターおよび遺伝子の探索については遅れているため。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) リン欠乏時の根で油脂(TAG)を蓄積する変異体の単離 平成25年度までに作出したシロイヌナズナ形質転換体の根の油脂含量を調べる。また、TAG分解酵素の発現を抑制すると油脂含量がさらに増加する可能性があるので、これまでに単離した形質転換体をバックグラウンドにTAG分解を抑えた形質転換体を作成する。 (2) リン欠乏時のシロイヌナズナ根における網羅的遺伝子発現解析 平成26年度は、平成25年度に立ち上げたシロイヌナズナ水耕栽培の系を用いて植物を生育させ、解析を進める。 (3) リン欠乏時特異的にデンプンが蓄積しない変異体の単離 平成25年度までに進めることができなかったので、平成26年度前半のうちに野生株に変異原処理し、後半にスクリーニングを開始できるようにする。
|