研究課題
基盤研究(C)
本研究課題は、植物特異的なリンゴ酸・アニオン輸送体であるALMTファミリーの機能多様性に着目し、トマトのALMT相同遺伝子を単離・解析を行い、果実酸味成分のリンゴ酸の蓄積と、植物体内におけるリンゴ酸・アニオン輸送に伴うバイオマス増産への応用を目指す。材料には、形質転換が可能であり、ゲノムデータベースが構築されているMicroTomを用いて、最初にALMT相同遺伝子の単離と発現様式、発現場所の特定を行った。ゲノムおよびESTデータベースから8つのALMT相同遺伝子をピックアップし、PCRにより発現解析を行った。特に、5つが液胞局在のクレードになっており、そのうち2つが果実の成熟過程で恒常的に発現している事が明らかとなった。もう一つ、別の機能未同定クレードからも、果実の未熟段階で発現の高い相同遺伝子が見つかった。この3つについて、遺伝子のクローニングを行い、アフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理学的手法でリンゴ酸輸送活性を測定した。その結果、液胞クレードの一つがリンゴ酸輸送活性を示したが、もう一つは明確な輸送活性は見られなかった。そこで、輸送活性のあったALMTの過剰発現・抑制系統を作製した。その結果、2つの過剰発現系統を得る事ができた。現在、果実および葉などの組織におけるリンゴ酸含量の測定を行っている。機能未定のクレードに属するALMTも電気生理学的に解析した結果、高いリンゴ酸輸送活性が示された。これについても現在、形質転換植物の作製を進めている。
2: おおむね順調に進展している
H24年度の計画にあったように、トマトの果実で発現するALMT輸送体を明らかにし、遺伝子を単離した。さらに、電気生理学的解析によって、そのうちの2つはリンゴ酸輸送活性を示すことを明らかにした。また、形質転換トマト(過剰発現)の作製も、ほぼ予定通りに進んでいる。ただし、発現抑制株の作出に至っていない。これは遺伝子がトマトの生育および稔性に関わっている可能性が考えられる。現在、プロモーターを変えて、発現抑制の形質転換体の作出を試みている。
現在は主に、液胞クレードと機能未知の2つのトマトALMTについて形質転換体の作出とリンゴ酸含量の変化について、生理的な解析を進めている。さらに、これらALMTの電気生理学的な機能解析をさらに進めることにより、基質特異性の解析も進める。また、蛋白質の局在を明らかにするために、GFPとの融合タンパク質の一過的発現系、または既に作製したALMT抗体を用いたイムノブロット解析により明らかにする。植物体の果実成熟過程や発現組織をプロモーター::GUSにより解析し、果実におけるリンゴ酸蓄積変動への影響を明らかにする。こうしてALMT輸送体の果実での生理的役割や植物バイオマス増大にどのように応用できるかを明らかにする。
遺伝子解析、電気生理解析の消耗品に用いる予定である。
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