研究課題/領域番号 |
24580096
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
谷川 東子 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (10353765)
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研究分担者 |
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 土壌有機物安定化 / エステル硫酸 / イオウ / アルミニウム腐植複合体 / 硫酸イオン / 溶脱 |
研究概要 |
日本の森林土壌に多く蓄積されているエステル硫酸は、無機の硫酸イオンになる直前の形態として知られている。これが微生物の分解に関して不安定な有機物であれば、t癖器量が多いだけに流域への流出が懸念されるが、我々はこのエステル硫酸はアルミニウム腐植複合体に取り込まれ安定して存在していると仮説を立てている。土壌培養、比重分画、XAFS測定を組み合わせた総合的な分析知見から、この仮説を検証する。この目的のために、土壌の高知から宮城までの広い範囲で、褐色森林土と黒色土の表層土壌を採取した。ナルゲン社のボトルトップフィルターに乾燥重量50g相当の生土を50gのガラスビーズに混入し、透水性と通気性を確保した状態で280日間、25度と35度で培養した。培養中は水分の蒸発速度を抑制し、異物の混入を防ぐため、サランラップをかけた。また保水性をたもつためにガラスウールを土壌の下部と表面に敷き詰めた。有機物の無機化により生成した硫酸イオンを、2週間に1度の割合で0.02Nの塩化カリウム溶液でリーチングして洗い落すオープンシステム培養を採用した。またリーチングを行わない週には蒸発水分の補充を行った。培養期間と温度は先行研究に基づき設定した。培養実験は3反復で行った。また農業環境技術研究所で、土壌の比重分画法を習得した。現在、培養前の森林土壌(生土)をタングステン酸ナトリウムにより比重1.8で分画中である。また、塩化カリウムリーチング溶液の硫酸イオン含有率をイオンクロマトグラフィー法により測定中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は土壌試料の採取と培養の開始を目標にしており、上述の通り達成している。
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今後の研究の推進方策 |
土壌培養実験の前と後の土壌につき、比重分画を行う。比重は比較的新鮮な有機物が主体であるライトフラクション、鉱物と結合している有機物が主体であるヘビーフラクションの2画分に分ける。その境界比重は1.8とする。比重分画試料についてS-K edge XAFS測定を行う。イオウ蓄積にかかわる土壌特性を把握する。ライトフラクションのエステル硫酸イオンは分解されるがヘビーフラクションのエステル硫酸イオンは分解量が少ないことを確認し、アルミニウム腐植複合体量の多い土壌でこの傾向が強いか否かを確認することで、仮説の是非を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
土壌培養実験(有機態イオウの無機化促進実験)を終了する。培養後土壌の比重分画を行う。比重は培養前土壌の場合に採用した1.8を用いる。イオウ蓄積にかかわる土壌特性を把握する。
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