研究課題/領域番号 |
24580096
|
研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
谷川 東子 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (10353765)
|
研究分担者 |
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
|
キーワード | アルミニウム腐植複合体 / 土壌 / 有機物安定化機構 / 土壌酸性度 / イオウ / エステル / 土壌鉱物 |
研究概要 |
日本の土壌、とくに火山灰土はイオウを多く含み、その主要な蓄積形態の一つはエステル硫酸態イオウであることがわかってきた。イオウは土壌から流出する際、硫酸イオンというマイナスに電気をもつ形態になり、カルシウムなどプラスの電気をもつ栄養塩を随伴して流亡するので、土壌にイオウが蓄積する仕組みの解明は重要である。本研究では、エステル硫酸は、アルミニウム腐植複合体に取り込まれ安定して存在していると仮説を立て、土壌培養、比重分画、XAFS測定を組み合わせた総合的な分析知見から、この仮説を検証することを目的としている。全国から採取した森林の表層土壌を280日間、25度と35度で培養し、有機物の分解を促した。培養試料について比重分画により軽比重画分(比重1.8未満)、重比重画分(比重1.8以下)に分画した。得られた試料を S K-edge XANES測定に供するため、現在は凍結乾燥等の処理を行い試料を調整している。イオウが鉱物によって安定化して流域に存在することを一流域全体で評価した論文がGeoderma(elsevier)に、エステル硫酸態イオウがアルミニウム腐植複合体に取り込まれる速度を律則する要因を解明した結果を記した論文がBiology and Fertility of Soils(Springer)に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最終年度に放射光分析を行うため、順調に土壌試料が調整されている。また、流域全体における土壌イオウの存在が鉱物に規定されていること、エステル硫酸の動態にアルミニウム腐植複合体がかかわることを記した論文2本が国際誌に掲載された。
|
今後の研究の推進方策 |
培養し有機物分解を加速した土壌を比重分画により鉱物によって安定化されていると考えられる画分と安定化していないと推定される画分に区分した。これを放射光分析(S K-edge XANES)にかけ、鉱物による安定化が進んでいると考えられる画分に相対的に多くのエステル硫酸が残存していることを確認することで、エステル硫酸がアルミニウム腐植複合体によって取り込まれて安定化しているか否かの仮説検証を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度に行う予定である放射光分析と、本年度行う予定であった他の土壌化学分析を、土壌試料の状態を統一するために同時で行うのが良いと考えたため、実験予定の一部を次年度に繰り越したために、実験予算もまた繰り越さざるを得なかった。 培養し、有機物の分解を加速させた土壌試料を比重分画にかけ、再調整した土壌試料について、放射光分析と土壌化学分析を行う。
|