研究課題/領域番号 |
24580097
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
森 昭憲 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所草地管理研究領域, 主任研究員 (60355089)
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キーワード | 脱窒酵素活性 / 草地土壌 / 堆肥 |
研究概要 |
精密管理されたオーチャードグラス単播草地の堆肥区と化学肥料区の土壌(0-5cm)を供試した。堆肥区には、平成16年度から乳牛堆肥(30 Mg ha-1 year-1)が表面散布され、連用年数に対応した減肥がなされた。平成25年度の硫安施肥量は95 kg N ha-1 year-1で、化学肥料区(190 kg N ha-1 year-1)に対する減肥率は50%であった。なお、土壌は表層に火山灰を含む褐色低地土である。土壌試料は、1番草施肥(3/18)、2番草施肥(5/20)、3番草施肥(7/8)、4番草施肥(9/2)の4~10日後に採取した。昨年度に引き続き、アセチレン阻害法でDEAを測定した。ふるい(4 mm)を通した土壌(15 g)をバイアル瓶(125 mL)に秤取し、クロラムフェニコール、硝酸カリウム、グルコースを含む水溶液(15 mL)を添加した。続いて、ブチルゴム栓で密封後、ヘッドスペースを窒素ガスで置換した。さらに、アセチレン(10%)を添加して振とう培養(25℃)し、1~4時間後のN2O濃度の経時変化を基礎にDEAを求めた。また、アセチレンを添加しない条件でも、同様の培養実験を行い、脱窒過程におけるN2O/N2+N2Oの生成比率を推定した。さらに、処理、施肥時期、ブロックが、DEA、N2O/N2+N2Oの生成比率、土壌pH(H2O)に及ぼす影響を3元配置分散分析で調べた。DEAは、堆肥区が化学肥料区より高く、夏期に高まる明確な季節変化を示した。他方、脱窒過程におけるN2O/N2+N2Oの生成比率は、堆肥区が化学肥料区より小さく、夏期に処理間差が拡大した。また、土壌pH(H2O)は、堆肥連用と硫安減肥の影響を受け、堆肥区で化学肥料区より高く推移した。以上から、堆肥連用はDEAを高めるが、土壌pH(H2O)を改善することで、N2O/N2+N2Oの生成比率を抑制し、脱窒に由来するN2O発生量を抑制すると考えられた。また、DEAは夏期に高まるが、堆肥区におけるN2Oの生成比率は夏期に抑制されると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
草地土壌のDEAは堆肥区が化学肥料区より高く、堆肥連用は特に表層土壌のDEAを高めた。また、土壌pH値は、堆肥区では表層ほど高く、化学肥料区では表層ほど低く、堆肥および硫安の表面散布の影響を強く受けていた。これらの結果から、堆肥散布による有機物供給と土壌pHの上昇が相乗的に堆肥区のDEAを高めたと推察された。また、N2O/N2+N2O比率は、堆肥区が化学肥料区より低く、堆肥連用によるpH値の上昇がN2O/N2+N2O比率を低下させたと推察された。以上は計画段階における作業仮説を概ね支持するものである。 1、2、3、4番草の施肥後(3、5、7、9月)の時期に対応するDEAが示され、DEAの季節変化が明らかとなった。特に、3~4番草の施肥後にDEAが高まり、堆肥区は化学肥料区より、DEAの季節変化が大きいことが確認された。他方、N2O/N2+N2O比率は、堆肥区で3~4番草の施肥後に低くなった。以上の結果は、化学肥料区との比較において、堆肥区では夏期に脱窒が盛んとなるが、N2O発生量の増加は比較的穏やかであることを示唆しており、圃場におけるN2O発生量の季節変化(Mori and Hojito 2012)の傾向を裏付けるものである。以上の結果から、当該研究課題は、概ね計画通り進捗しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
堆肥連用の直接的影響は、易分解性有機物の供給量と土壌pH値の処理間差がもたらすと考えられる。しかしながら、堆肥区は化学肥料区より硫安施肥量が少ないため、無機態窒素濃度の処理間差も、間接的に、脱窒プロセスに影響を及ぼしている可能性がある。そこで、①クロラムフェニコール、②クロラムフェニコール+硝酸カリウム、③クロラムフェニコール+グルコース、④クロラムフェニコール+硝酸カリウム+グルコースの4種類の培養液でDEA測定を試みる。この測定でDEAとN2O/N2+N2O生成比率に及ぼす施肥量、易分解性有機物、土壌pHの影響を分離して、堆肥連用がN2O発生量を抑制する機作を詳しく推定する。さらに、平成25年度の測定結果を検証するため、平成26年の結果を含む2年分のデータを基礎に、DEAとN2O/N2O+N2生成比率の処理間差、季節変化、年次間差を分散分析で解析し、一連の結果の更なる裏付けを図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年度日本草地学会宮崎大会が、平成25~26年度をまたいで開催されたことにより、当該出張の会計処理が次年度になされるため。また、平成25年度は、実験方法改善により、高純度アセチレンガスの使用量を節約できたことにより、購入時期を次年度に繰り延べたため。 2014年度日本草地学会宮崎大会の出張旅費として支出する。また、次年度は脱窒酵素活性の培養実験で処理を拡充するため、高純度アセチレンガスの追加購入費に充てる。
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