研究課題
基盤研究(C)
光合成産物に由来する炭素代謝と窒素代謝には、相互にバランスを保つような仕組みが存在することが知られている。しかし、どのようなメカニズムが働いているのかについてはほとんどわかっていない。これまでに、光合成電子伝達鎖の構成因子であるFNRの2つのアイソフォームの量比の変化に伴い、フェレドキシンのアイソフォーム量が変化し、窒素代謝と二酸化炭素固定への電子分配が変化することを明らかにしている。そこで今年度は、フェレドキシンと2つのFNRがどのような環境でまたどのような組織で発現するのかを明らかにした。イネのFNR1とFNR2は葉身・葉鞘で発現が高く、幼穂が発達する段階で発現が高くなっていき、開花後は徐々に発現が下がっていった。これらの組織でのFNR1とFNR2の差はみられなかった。また異なる窒素濃度でイネを生育させ、FNR1とFNR2の発現変化を観察した。その結果アイソフォームの発現は窒素濃度依存性はみられず、両者とも常に同じくらいの発現を示した。シロイヌナズナのFNR1とFNR2もロゼット葉での発現が最も高く、ほぼ同様な発現パターンを示していた。次にフェレドキシンのアイソフォームの発現パターンを解析した結果、アイソフォームごとに発現量は異なるが、発現パターンは似たような傾向であった。炭酸固定活性がより誘導される高い二酸化炭素濃度で生育させたシロイヌナズナでの発現も確認した。その結果、アイソフォーム間での大きな違いは見られなかった。
3: やや遅れている
今年度の前半に出産育児休業のため5か月休みをとったため。
FNRとフェレドキシンのアイソフォームがどのように発現制御されているのか、またどういうアイソフォームの組み合わせで機能しているのかを調べることにより、二酸化炭素固定と窒素代謝への電子分配のメカニズムを明らかにする。具体的には、窒素代謝に関与するアイソフォームを同定するために、FNRとフェレドキシンの各アイソフォームがどのような生育条件で発現誘導されるかを窒素源の種類と濃度を変えることにより調べていく。またNADP+の光還元活性と亜硝酸還元酵素への電子伝達活性を、過剰発現体・遺伝子破壊株から単離した葉緑体、組み換えタンパク質を用いて解析することにより、FNRとフェレドキシンアイソフォームのどの組み合わせでNADP+の光還元と窒素代謝への電子伝達を行うのかを決定する。
平成24年度に産前産後休業を取得し、5か月間休んでいたため若干研究に遅れが生じた。そのため25年度分とあわせて、イネに存在する5つのフェレドキシンアイソフォームが葉緑体に存在するかどうか確認するため、Fd1-Fd5を認識する抗体を作成する。また、遺伝子発現量の半定量や組み換えタンパク質の発現のコンストラクト作成などのため遺伝子増幅に用いる機会を購入する。
すべて 2013
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PNAS
巻: 110 ページ: 2395-2400
10.1073