研究実績の概要 |
これまでに光合成電子伝達鎖の構成因子であるFNRの葉で発現している2つのアイソフォーム(LFNR1・LFNR2)の量比の変化に伴い、フェレドキシン(Fd1・Fd2・Fd3・Fd4)のアイソフォーム量が変化し、窒素代謝と二酸化炭素固定への電子分配が変化することを明らかにした。そこで今年度は炭素代謝に影響を及ぼすと考えられる高二酸化炭素濃度において、シロイヌナズナのFNRとフェレドキシンアイソフォームが、どのような挙動を示すのかについて経時変化(2h, 6h, 12h, 1d, 3d, 7d, 24d)の発現量を確認した。LFNR1・LFNR2ともに高二酸化炭素濃度において若干発現量が低下しており、低下量はLFNR1が比較的顕著に低下していた。同様にFd1・Fd2も若干の発現低下がみられた。一方、Fd3・Fd4の発現量は若干増加していた。メリステムの発現量についても高二酸化炭素濃度の影響を確認したところ、LFNR2で若干の発現の増加がみられた。また根で発現するアイソフォームであるRFNRについても高二酸化炭素濃度での発現変化を観察したところ、RFNR1・RFNR2ともに若干増加することが確認された。一般的に光合成関連の遺伝子発現は、高二酸化炭素濃度において減少することが知られている。LFNRのアイソフォームはいずれも減少していたが、フェレドキシンのアイソフォームには発現の違いがみられた。このことから、フェレドキシンのアイソフォームの量比により炭素固定への電子分配を制御している可能性が示唆された。
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