研究概要 |
マクロアレイ解析により、ゲニステインで強く誘導発現することが見出されたダイズ根粒菌(Bradyrhizobium japonicum)ゲノム領域(BjG30)の遺伝子発現量を定量的RT-PCRで調べた。その結果、多剤排出ポンプに関わる遺伝子など12個の遺伝子で最大214倍の発現が確認され、マクロアレイの発現プロファイルとよく一致していた。しかし、ダイゼインでは顕著に発現せず、ゲニステインによる誘導発現がダイゼインで抑制されたことから、ゲニステインとダイゼインは構造が類似した、根粒菌の共生過程で機能する代表的なフラボノイドだが、BjG30の誘導発現はゲニステインでのみ生じ、ダイゼインで競合的に阻害されることが明らかになった。次に、ゲニステインで顕著に発現した4つの代表遺伝子(bll7019, bll7025, blr7027, blr7029)の誘導発現量をゲニステイン等の5-ヒドロキシフラボノイドとダイゼイン等の5-デオキシフラボノイドで比較した。その結果、5-ヒドロキシフラボノイド(ビオカニン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、ルテオリン)では顕著な発現が見られたが、5-デオキシフラボノイド(フォルモノネチン、グリシテイン、クメストロール)では見られなかったことから、BjG30は主に5-ヒドロキシフラボノイドで強く誘導発現されることが明らかになった。更に、ゲニステイン誘導時間と濃度の発現への影響を調べた結果、発現は誘導5分で始まり、15分で最大に達すること、及び発現量は濃度に依存することが明らかになった。共生に重要な根粒菌のnodulation(nod)遺伝子(nodW, nodD1)の発現は誘導15分で見られ、時間とともに増加傾向を示し、発現量は濃度に依存しなかったことから、BjG30の発現プロファイルとは全く異なることが示された。
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