研究課題
ゲニステインで強く誘導発現されるダイズ根粒菌Bradyrhizobium japonicum USDA110 ゲノム領域(BjG30)の多剤排出ポンプ(RND型薬剤排出ポンプ)遺伝子(bll7019-7021)破壊株(ΔRND)、ポリヒドロキシ酪酸代謝遺伝子(blr7028-7029)破壊株(ΔPHB)、及びTetR転写調節遺伝子(blr7023, bll7024)破壊株(ΔTetR7023, ΔTetR7024)を構築した。即ち、B.japonicum USDA110クローンライブラリーから目的遺伝子領域を含む遺伝子断片を単離し、suicide vector(pK18mob)に挿入後、目的遺伝子内、或はその欠失部位にΩカセットを挿入し、破壊プラスミドを構築した。これをtri-parental matingによりB. japonicum USDA110に導入し、相同組換え(double crossover)により目的遺伝子を破壊した。構築された破壊株の根粒の着生数(接種25~40日:number/plant)と重量(接種40日目:mg/nodule)、植物体重量(接種40日目:g/plant)、及び窒素固定能(接種40日目:acetylene reduction activity/nodule)を親株と比較した結果、ΔRND株の根粒数は親株よりも増加したが、根粒重量と窒素固定能は有意に低下した。ΔTetR7023株は、根粒数は親株の50%程度に減少したが、根粒重量と窒素固定能は増加した。しかし、いずれの破壊株も、植物体あたりの重量が減少した。一方、ΔPHB株とΔTetR7024株は親株と比べて大きな差はみられなかった。以上の結果から、BjG30の多剤排出ポンプとTetR転写調節遺伝子(blr7023)は機能的な共生関係の構築に重要であることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
宿主ダイズから放出されるフラボノイド化合物(ゲニステイン)によって強く誘導発現するダイズ根粒菌Bradyrhizobium japonicum遺伝子領域(BjG30)の共生における役割を明らかにするため、当該年度は、BjG30領域の破壊株の構築とその共生能の評価を目的とし、以下1)2)の研究計画に対する結果を得た:1)BjG30の破壊株の構築を計画した。その結果、多剤排出ポンプ(RND型薬剤排出ポンプ)遺伝子(bll7019-7021)破壊株(ΔRND)、ポリヒドロキシ酪酸代謝遺伝子(blr7028-7029)破壊株(ΔPHB)、及びTetR転写調節遺伝子(blr7023, bll7024)破壊株(ΔTetR7023, ΔTetR7024)が構築された。2)破壊株の共生能の親株との比較を計画した。その結果、ΔPHB株とΔTetR7024株は親株と比べて大きな差はみられなかったが、ΔRND株とΔTetR7023株は植物体あたりの窒素固定能が低下したことから、BjG30の多剤排出ポンプとTetR転写調節遺伝子(blr7023)は機能的な共生関係の構築に重要であることを明らかにした。以上、BjG30領域の破壊株が構築され、その共生における役割が明らかになり、研究の目的はおおむね順調に進展している。
現在までの達成度はおおむね順調に進展しているため、今後の研究は、交付申請書に記載した研究実施計画に従って推進する計画である。即ち、構築されたBjG30破壊株の感染競合能を評価するとともに、マクロアレイ解析と定量的RT-PCRにより遺伝子破壊が共生関連遺伝子群の発現に及ぼす影響を調べ、BjG30の特に多剤排出ポンプの共生における役割を明らかにする計画である。
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Microbes and Environments
巻: 28 ページ: 414-421
10.1264/jsme2.ME13057