• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

シアノバクテリアのバイオフィルム形成と新規塩耐性獲得メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 24580100
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東北大学

研究代表者

七谷 圭  東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00547333)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードラン藻 / バイオフィルム / ポリアミン / cyclic di-GMP / ヒスチジンキナーゼ
研究概要

ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803は,高塩濃度下をはじめとした環境ストレス下においても生育が可能な光合成微生物である.研究代表者はこれまでに,Synechocystis が塩ストレス条件下でバイオフィルムを形成することを見いだしている.また, 他の微生物において, バイオフィルム形成に際して,細胞内のシグナル因子であるポリアミンやcyclic di-GMP が重要な役割を果たしていることが推察されている. しかしながら,Synechocystis においては, バイオフィルム形成誘導の詳しい機構は明らかにされていない.そこで本年度は,ポリアミン生合成やcyclic di-GMP合成・分解に関連する酵素蛋白質をコードした遺伝子の欠損株を作成し,これらの遺伝子の環境ストレス下におけるバイオフィルム形成への関与を検討した.また,Synechocystisの環境ストレスセンサーであるヒスチジンキナーゼ(Hik)の遺伝子欠損株についても同様に検討した.その結果,Δslr2077株とΔslr0401株でバイオフィルム形成量が減少した.slr0401は細胞外のポリアミンを検知するPotDをコードする遺伝子,slr2077はPotD と結合しcyclic-di-GMP合成を行うMbaAをコードする遺伝子であり,これらがSynechocystis におけるバイオフィルム形成において重要な役割を担っていることが推察された.また,Hikについてもcyclic-di-GMP合成能を示す配列を有するHik17の欠損株でバイオフィルム形成量が減少した.一方で,塩ストレス応答が報告されているHikの欠損株でありながらもバイオフィルム形成量が変化しないものもあった.これらの結果から,塩ストレスを感知するHikの中でも限られたHikがバイオフィルム形成誘導に関与することが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ラン藻のバイオフィルム生合成メカニズムと塩ストレスによる生合成誘導機構の全容解明に向けて、生化学的アプローチと遺伝学的アプローチを組み合わせて研究をすすめている。
(A-1) バイオフィルム生合成を制御するポリアミン生合成酵素の探索
これまでにSynechocystis sp. PCC6803のバイオフィルム形成には、ポリアミンが関与していることを明らかにしている。そこで本年度は、公開されているゲノム情報を利用して、ポリアミン生合成酵素を推定し破壊株の作製をおこなった。さらに、これらの破壊株のバイオフィルム形成能を調べ、バイオフィルム形成への関与を検討した。
(B-1) バイオフィルム形成を誘導する浸透圧センサー(Hik)の同定
破壊株をライブラリーを用いたスクリーニングによリSynechocystis sp. PCC6803の有する47のヒスチジンキナーゼのうち、塩ストレスを感知しバイオフィルム形成を誘導するヒスチジンキナーゼの候補を選抜した。さらに、これらの候補株の中にセカンドメッセンジャーの一つc-di-GMPの生合成に関与する遺伝子が数多く含まれることを見出した。今後は、これらのヒスチジンキナーゼを中心に、これらの遺伝子がどのような遺伝子の発現を制御しているのかを検討する。

今後の研究の推進方策

(A-1) バイオフィルム生合成酵素の探索:平成24年度に引き続き実施する。
(B-1) バイオフィルム形成を誘導する浸透圧センサー(Hik)の同定:平成24年度に引き続き実施する。
(B-2) バイオフィルム生合成遺伝子の発現を制御するレスポンスレギュレーター(Rre)の同定
Hikが高浸透圧を感知しバイオフィルム生合成酵素が発現活性化するまでには、バイオフィルム生合成酵素の発現を制御するレスポンスレギュレーター(Rre)が存在すると推定される。そこで、Synechocystis sp. PCC6803の有する45のRre破壊株ライブラリーに、バイオフィルム生合成酵素のプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結したコンストラクトを導入し、高浸透圧によるルシフェラーゼの発現パターンを解析する。バイオフィルム生合成を誘導するRreの破壊株では、ルシフェラーゼ活性の低下が観察される。
(C-1)バイオフィルム生合成関連遺伝子の網羅的スクリーニング
Synechocystis sp. strain PCC 6803(Synechocystis)のバイオフィルム形成に関連する遺伝子は全く調べられていない。本研究ではEMS処理によって突然変異を誘発した菌株をマイクロタイタプレート上で培養し、バイオフィルム形成を誘導し、その形成量をクリスタルバイオレット染色で検出する。変異体の中で、顕著にバイオフィルム形成量に変化の見られた菌株について、次世代ゲノムシーケンサーにより全ゲノム配列を解析し、バイオフィルム形成関連遺伝子群を網羅的に同定する。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額は、当初計画していたバイオフィルム生合成酵素の探索とバイオフィルム形成を誘導する浸透圧センサー(Hik)の同定を平成25年度も引き続き行うことによって生じたものであり、これらの実験に必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
【消耗品】
・バイオフィルム生合成関連遺伝子の遺伝子破壊用プラスミドDNAの作製のため合成オリゴDNA(700円/1合成)・遺伝子工学実験用試薬(Ex-tag DNA polymerase [Takara, 12千円/250U], Prime Star DNA polymerase [Takara, 12千円/250U], DNA ligase [TOYOBO, 円/U], 特級寒天 [9,600円/ 500g], プラスミド抽出キット[20,000円/100サンプル分], BigDye v3.1 [ABI, 600,000円/100回分])・ラン藻の遺伝子破壊株の培養用試薬・電子顕微鏡観察用試薬(グルタルアルデヒド [Nakarai, 7,700円/10 ml])・バイオフィルム検出用試薬(クリスタルバイオレット [和光純薬3.6千円/25 g])・プラスチック器具(200 ulチップ [グライナー, 1,500円/1,000本], 1000 ulチップ [グライナー, 1,700円/1,000本], 1.5 ml サンプルチューブ [グライナー, 3,200円/1,000本])・ガラス器具(IWAKI, 試験管 [42 円/本], 500 ml 三角フラスコ [IWAKI, 3,200円/個]
【旅費・その他】
・研究成果を積極的に発表するため、国内学会(日本農芸化学会、日本生物工学会)参加費・旅費を計上した。・研究成果を英文誌にて発表するため、英語論文投稿料・英文校閲料を計上した。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] 植物と微生物の駆動力と膜輸送体:動物との相違点と共通性2012

    • 著者名/発表者名
      浜本晋、七谷圭、佐藤陽子、魚住信之
    • 雑誌名

      日本農芸化学会誌「化学と生物」

      巻: 50 ページ: 86-92

  • [学会発表] Functional characterization of K transporters in Synechocystis sp. PCC 68032012

    • 著者名/発表者名
      七谷圭、四十九俊彰、高野洋佑、山崎智子、Lalu Zulkifli、赤井政郎、飯塚龍、松本秀之、丸山央峰、新井史人、魚住信之
    • 学会等名
      The IUBMB & FEBS 2012 Congress
    • 発表場所
      スペイン セビリア
    • 年月日
      20120904-20120909
  • [学会発表] Membrane transport system conferring the salinity tolerance to bacteria and plant cells

    • 著者名/発表者名
      魚住信之、七谷圭、浜本晋
    • 学会等名
      6th Japan-Finland Biotechnology Symposium 2012
    • 発表場所
      仙台市
  • [学会発表] Synechocystis sp. PCC 6803 の浸透圧調節に関与するKdp系Kトランスポーターの機能解析

    • 著者名/発表者名
      七谷圭、四十九俊彰、高野洋佑、山崎智子、Lalu Zulkifli、赤井政郎、飯塚龍、松本秀之、丸山央峰、新井史人、魚住信之
    • 学会等名
      創立90周年記念 第64回日本生物工学会大会
    • 発表場所
      神戸市
  • [学会発表] Arabidopsis 膜電位依存性カリウムチャネル活性のリン酸化による制御

    • 著者名/発表者名
      奥原達也、七谷圭、水口義裕、浜本晋、魚住信之
    • 学会等名
      第54回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      岡山市
  • [学会発表] Synechocystis sp. PCC6803の細胞外多糖生産を調節する機構解析

    • 著者名/発表者名
      冨永昂、三浦のぞみ、佐伯千香、七谷圭、魚住信之
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      仙台市
  • [学会発表] K+トランスポーターKupの輸送活性に必要な負電荷アミノ酸の同定

    • 著者名/発表者名
      清水真、七谷圭、浜本晋、黒澤友世、水谷昭文、魚住信之
    • 学会等名
      日本農芸化学会2013年度大会
    • 発表場所
      仙台市
  • [学会発表] Phosphorylation-dependent modulation of Shaker-type K channels in Arabidopsis thaliana

    • 著者名/発表者名
      Mizuguchi Y, Hamamoto S, Okuhara T, Nakayama K, Matsumoto N, Nanatani K, Uozumi N
    • 学会等名
      6th Japan-Finland Biotechnology Symposium 2012
    • 発表場所
      倉敷市

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi