• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

原核生物Hsp90シャペロンネットワークの解析

研究課題

研究課題/領域番号 24580102
研究機関埼玉大学

研究代表者

仲本 準  埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30192678)

キーワード分子シャペロン / 熱ショックタンパク質 / Hsp90 / Hsp70
研究概要

昨年度の研究成果は、HtpGが、DnaK2-DnaJ2-GrpE(KJE)シャペロン系と、ATP依存的あるいは非依存的に協同的シャペロン作用することを明らかにしたことであるが、これらの成果を中心にして論文に纏め、国際的に高く評価されている学術雑誌Journal of Biological Chemistryに発表した。これらの成果をさらに発展させるために以下の実験を行った。真核細胞のHsp90がHsp70と協同作用するには、Hopと呼ばれるコシャペロンが必要とされる。Hopのホモログは原核生物には見つかっていないが、申請者はDnaJ2が、Hopのように、二つの代表的分子シャペロンの協同的シャペロン作用において鍵となる働きをすると考えた。Hsp40やDnaJは、Jドメインタンパク質(JDP)ファミリーのメンバーで、メンバーは三つのタイプ(I型~III型)に分類される。DnaJ2はII型JDPであるが、シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC7942ゲノムを探索したところ、10種類のJDPホモログをコードするORFが存在した。本年度は、これらのJDPを単離・精製し、果たして(ストレス誘導性の)DnaJ2のみがHtpGと特異的に相互作用して、DnaK2との協同作用を可能にするのかどうかを調べることにした。高度に精製された標品を十分量得ることができたIII型JDPの一つ(DnaJ2とはJドメインのみが相同)をDnaJ2の代わりに用いても(ATP非依存的な)HtpGとKJEシャペロン系との協同作用は観察されなかった。この結果はDnaKとの相互作用に必須とされるJドメインが、HtpGとの相互作用には必要とされないことを示唆するものである。さらに研究を継続し、HtpGとDnaK2の協同作用に必要とされるJDPの構造的・機能的特性を明らかにしたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、昨年度までの研究成果を纏めて、国際的に高く評価されている学術雑誌Journal of Biological Chemistryに発表することができた。この論文の審査員からは、’these findings have never been reported and are novel’という高い評価を受けた。この論文作成に加えて、DnaJ2以外のJドメインタンパク質(JDP)も、HtpGとDnaK2シャペロン系の協同作用に関与するのかどうかを明らかにしょうとした。その理由は、DnaJ2が、原核生物では初めてのHtpG(Hsp90)の特異的コシャペロンであるということを十分に証明し、論文として発表すべきであると考えたからである。シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC7942ゲノム上に存在した10種類のJドメインタンパク質(JDP)ホモログをコードするORFの中で、大腸菌における大量発現が可能で、高度な精製標品を得ることができたIII型JDPの一つを(DnaJ2の代わりに)用いて実験を行ったところ、HtpGとDnaK2との協同作用は観察されなかった。この結果は、II型JDPの一つである DnaJ2が二つの分子シャペロンの協同作用にとって特異的なコシャペロンとして働くことを示唆するものであり、重要な発見である。上記のIII型JDPとDnaJ2以外の(ほとんどの)JDPは大腸菌で十分に発現せず、(たとえ発現しても)精製は困難であったが、来年度も継続して実験を行い、各JDPで得られた結果を比較することで、協同作用に必要とされるJDPの構造的・機能的特性を明らかにしたい。

今後の研究の推進方策

シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC7942ゲノム上に存在するJドメインタンパク質(JDP)ホモログの中で、既に解析を行ったDnaJ2(II型JDP)とIII型JDPの一つを除く他のJDPを単離・精製し、これらがHtpGとDnaK2との協同作用を仲介するコシャペロンとして働くかどうかを解析する。既に協同作用に関与することを明らかにしているDnaJ2は、JドメインとC末側の二つのドメインから構成されるが、これらの各ドメインを精製し、どれがHtpGあるいはDnaK2と特異的に相互作用するのかを明らかにする。これらの実験結果から、HtpGとDnaK2の協同作用に必要とされるJDPの構造的特性を明らかにする。次に、HtpGとDnaK2の協同作用に必要とされるJDPの機能的特性を明らかにすることを目的として以下の実験を行う。真核細胞Hsp90のコシャペロン(Hop)は、Hsp90の機能を調節(阻害)するが、果たしてDnaJ2や他のJDPがHtpGのコシャペロンとして、その機能を調節するのかどうかを解析する。

次年度の研究費の使用計画

昨年度の使用計画に記載したように、平成25年度は非常勤研究員を半年間雇用するために人件費・謝金を計上したが、当該年度中にこの非常勤研究員を半年以上雇用する可能性が生じた。この人件費の増加分を確保するために、人件費以外の経費の使用を制限した。しかし幸いなことに、この研究員は、半年間の雇用が終わる直前に次の受入れ先を見つけることができた。このことが明らかになったのは、昨年度末近くで、経費の執行を十分に計画的に行うのが難しく、余剰金が生じた。
次年度は、消耗品に加えて、(最終年度における研究を効率的に進めるために)分光光度計やインキュベーター等の備品の購入を予定している。現有品には経年劣化がみられるので予期しない故障に備えるためにも購入することが望ましいと考えている。また、2年ごとにヨーロッパで開催されるHsp90国際会議に出席するための旅費を支出する。この国際会議には、世界のHsp90研究を先導する研究者が一堂に集う。この会議に参加して、これらの研究者と情報交換を行い交流を深めると共に、我々の研究発表を行う予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Physical Interaction between Bacterial Heat Shock Protein 90 (Hsp90) and Hsp70 Chaperones Mediates Their Cooperative Action to Refold Denatured Proteins2014

    • 著者名/発表者名
      Hitoshi Nakamoto, Kensaku Fujita, Aguru Ohtaki, Satoru Watanabe, Shoichi Narumi, Takahiro Maruyama, Emi Suenaga, Tomoko S. Misono, Penmetcha K.R. Kumar, Pierre Goloubinoff, Hirofumi Yoshikawa
    • 雑誌名

      The Journal of Biological Chemistry

      巻: 289 ページ: 6110-6119

    • DOI

      10.1074/jbc.M113.524801

    • 査読あり
  • [学会発表] Hsp90を活性化する天然小分子化合物2014

    • 著者名/発表者名
      仲本 準、天谷 洋介
    • 学会等名
      日本農芸化学会2014年度大会
    • 発表場所
      明治大学生田キャンパス、東京
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [学会発表] シアノバクテリアHsp90のコシャペロンと、Hsp90とHsp70のシャペロン協同作用2014

    • 著者名/発表者名
      仲本準、大瀧挙
    • 学会等名
      第55回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      富山大学五福キャンパス、富山
    • 年月日
      20140318-20140320
  • [学会発表] Physical interaction between bacterial Hsp90 and Hsp70 chaperones mediates their collaboration to refold denatured proteins2014

    • 著者名/発表者名
      Hitoshi Nakamoto
    • 学会等名
      231st IMEG seminars & Minisymposium
    • 発表場所
      熊本大学発生医学研究所、熊本
    • 年月日
      20140220-20140221
    • 招待講演
  • [学会発表] シアノバクテリア(ラン藻)のストレス耐性と分子シャペロン(HSP)2014

    • 著者名/発表者名
      仲本準
    • 学会等名
      PROSセミナー&大学院特別講義
    • 発表場所
      愛媛大学プロテオサイエンスセンター、松山
    • 年月日
      20140207-20140207
    • 招待講演
  • [学会発表] 種々の基質に対する原核生物Hsp90とHsp70の協同的シャペロン作用2013

    • 著者名/発表者名
      大瀧挙、仲本準
    • 学会等名
      第36回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸国際展示場、神戸
    • 年月日
      20131203-20131206
  • [学会発表] Hsp90の機能を調節する小分子化合物の探索と作用機構の解明2013

    • 著者名/発表者名
      天谷洋介、仲本準
    • 学会等名
      第36回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸国際展示場、神戸
    • 年月日
      20131203-20131206
  • [学会発表] シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942のHsp90 (HtpG) とHsp70 (DnaK)の協同的シャペロン作用2013

    • 著者名/発表者名
      仲本準、大瀧挙
    • 学会等名
      ラン藻の分子生物学 2013
    • 発表場所
      かずさアカデミアホール、木更津
    • 年月日
      20131122-20131123
  • [学会発表] 種々の環状リポペプチド抗生物質が分子シャペロンHsp90の機能に及ぼす影響2013

    • 著者名/発表者名
      仲本準,横山雄平,皆川俊,近藤恭光,森川正章,長田裕之
    • 学会等名
      第12回 微生物研究会
    • 発表場所
      東京電機大学千住キャンパス、東京
    • 年月日
      20131005-20131005
  • [学会発表] Molecular chaperones and stress responses in cyanobacteria2013

    • 著者名/発表者名
      Hitoshi Nakamoto
    • 学会等名
      University of Science, National University Ho Chi Minh City
    • 発表場所
      Ho Chi Minh City, Vietnam
    • 年月日
      20130920-20130920
    • 招待講演
  • [学会発表] Hsp90を調節する新規天然小分子化合物の同定と作用機構の解明2013

    • 著者名/発表者名
      仲本準、横山雄平、Ibrahim Jantan、皆川俊、近藤恭光、長田裕之、森川正章、岩舘満雄、梅山秀明
    • 学会等名
      ラン藻ゲノム交流会
    • 発表場所
      東京大学駒場キャンパスI、東京
    • 年月日
      20130713-20130713
  • [学会発表] 好熱性シアノバクテリア Thermosynechococcus elongatus BP-1由来カルボキソームのサブユニットCcmL、CcmMの機能・構造解析2013

    • 著者名/発表者名
      三木智寛、山口慶、山中保明、仲本 準、野口恵一、養王田正文、尾高雅文
    • 学会等名
      第14回日本蛋白質科学会年会
    • 発表場所
      とりぎん文化会館、鳥取
    • 年月日
      20130612-20130614
  • [学会発表] Cyclic lipopeptide antibiotic inhibitors and natural product activators of Hsp902013

    • 著者名/発表者名
      Hitoshi Nakamoto, Yuhei Yokoyama, Shun Minagawa, Yasumitsu Kondoh, Keigo Sueoka, Ibrahim Jantan, Masaaki Morikawa, Hiroyuki Osada
    • 学会等名
      The biology of molecular chaperones: From molecules, organelles and cells to misfolding diseases
    • 発表場所
      Santa Margherita di Pula, Italy
    • 年月日
      20130517-20130522

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi