研究課題/領域番号 |
24580102
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
仲本 準 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30192678)
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キーワード | 分子シャペロン / 熱ショックタンパク質 / Hsp90 / Hsp70 |
研究概要 |
昨年度の研究成果は、HtpGが、DnaK2-DnaJ2-GrpE(KJE)シャペロン系と、ATP依存的あるいは非依存的に協同的シャペロン作用することを明らかにしたことであるが、これらの成果を中心にして論文に纏め、国際的に高く評価されている学術雑誌Journal of Biological Chemistryに発表した。これらの成果をさらに発展させるために以下の実験を行った。真核細胞のHsp90がHsp70と協同作用するには、Hopと呼ばれるコシャペロンが必要とされる。Hopのホモログは原核生物には見つかっていないが、申請者はDnaJ2が、Hopのように、二つの代表的分子シャペロンの協同的シャペロン作用において鍵となる働きをすると考えた。Hsp40やDnaJは、Jドメインタンパク質(JDP)ファミリーのメンバーで、メンバーは三つのタイプ(I型~III型)に分類される。DnaJ2はII型JDPであるが、シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC7942ゲノムを探索したところ、10種類のJDPホモログをコードするORFが存在した。本年度は、これらのJDPを単離・精製し、果たして(ストレス誘導性の)DnaJ2のみがHtpGと特異的に相互作用して、DnaK2との協同作用を可能にするのかどうかを調べることにした。高度に精製された標品を十分量得ることができたIII型JDPの一つ(DnaJ2とはJドメインのみが相同)をDnaJ2の代わりに用いても(ATP非依存的な)HtpGとKJEシャペロン系との協同作用は観察されなかった。この結果はDnaKとの相互作用に必須とされるJドメインが、HtpGとの相互作用には必要とされないことを示唆するものである。さらに研究を継続し、HtpGとDnaK2の協同作用に必要とされるJDPの構造的・機能的特性を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度までの研究成果を纏めて、国際的に高く評価されている学術雑誌Journal of Biological Chemistryに発表することができた。この論文の審査員からは、’these findings have never been reported and are novel’という高い評価を受けた。この論文作成に加えて、DnaJ2以外のJドメインタンパク質(JDP)も、HtpGとDnaK2シャペロン系の協同作用に関与するのかどうかを明らかにしょうとした。その理由は、DnaJ2が、原核生物では初めてのHtpG(Hsp90)の特異的コシャペロンであるということを十分に証明し、論文として発表すべきであると考えたからである。シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC7942ゲノム上に存在した10種類のJドメインタンパク質(JDP)ホモログをコードするORFの中で、大腸菌における大量発現が可能で、高度な精製標品を得ることができたIII型JDPの一つを(DnaJ2の代わりに)用いて実験を行ったところ、HtpGとDnaK2との協同作用は観察されなかった。この結果は、II型JDPの一つである DnaJ2が二つの分子シャペロンの協同作用にとって特異的なコシャペロンとして働くことを示唆するものであり、重要な発見である。上記のIII型JDPとDnaJ2以外の(ほとんどの)JDPは大腸菌で十分に発現せず、(たとえ発現しても)精製は困難であったが、来年度も継続して実験を行い、各JDPで得られた結果を比較することで、協同作用に必要とされるJDPの構造的・機能的特性を明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC7942ゲノム上に存在するJドメインタンパク質(JDP)ホモログの中で、既に解析を行ったDnaJ2(II型JDP)とIII型JDPの一つを除く他のJDPを単離・精製し、これらがHtpGとDnaK2との協同作用を仲介するコシャペロンとして働くかどうかを解析する。既に協同作用に関与することを明らかにしているDnaJ2は、JドメインとC末側の二つのドメインから構成されるが、これらの各ドメインを精製し、どれがHtpGあるいはDnaK2と特異的に相互作用するのかを明らかにする。これらの実験結果から、HtpGとDnaK2の協同作用に必要とされるJDPの構造的特性を明らかにする。次に、HtpGとDnaK2の協同作用に必要とされるJDPの機能的特性を明らかにすることを目的として以下の実験を行う。真核細胞Hsp90のコシャペロン(Hop)は、Hsp90の機能を調節(阻害)するが、果たしてDnaJ2や他のJDPがHtpGのコシャペロンとして、その機能を調節するのかどうかを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の使用計画に記載したように、平成25年度は非常勤研究員を半年間雇用するために人件費・謝金を計上したが、当該年度中にこの非常勤研究員を半年以上雇用する可能性が生じた。この人件費の増加分を確保するために、人件費以外の経費の使用を制限した。しかし幸いなことに、この研究員は、半年間の雇用が終わる直前に次の受入れ先を見つけることができた。このことが明らかになったのは、昨年度末近くで、経費の執行を十分に計画的に行うのが難しく、余剰金が生じた。 次年度は、消耗品に加えて、(最終年度における研究を効率的に進めるために)分光光度計やインキュベーター等の備品の購入を予定している。現有品には経年劣化がみられるので予期しない故障に備えるためにも購入することが望ましいと考えている。また、2年ごとにヨーロッパで開催されるHsp90国際会議に出席するための旅費を支出する。この国際会議には、世界のHsp90研究を先導する研究者が一堂に集う。この会議に参加して、これらの研究者と情報交換を行い交流を深めると共に、我々の研究発表を行う予定である。
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