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2014 年度 実施状況報告書

原核生物Hsp90シャペロンネットワークの解析

研究課題

研究課題/領域番号 24580102
研究機関埼玉大学

研究代表者

仲本 準  埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30192678)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード分子シャペロン / 熱ショックタンパク質 / Hsp90 / Hsp70 / Hsp40
研究実績の概要

我々は、シアノバクテリアのHtpGがDnaK2と協調的にシャペロン作用することを明らかにした。本年度の成果の一つは、この新規シャペロン共同作用の制御機構に関する重要な知見を得たことである。その知見とは、我々が見つけた、HtpGのATPase活性を増大させる新規天然小分子化合物goniothalaminをHtpG-DnaK2シャペロン系に加えてHtpGの活性(だけ)を増大させると、この共同作用が促進されるのではなく、むしろ阻害されるというものである。この結果は、HtpGとDnaK2の共同作用が高効率で起こるには、これら二つの分子シャペロンの活性のバランスが重要であることを示唆している。これらの結果をJournal of Biochemistryに発表した。なお、活性のみならず、HtpGとDnaK2のモル比も重要であることを明らかにした。
上記のHtpG-DnaK2シャペロン系において、DnaJ2はコシャペロン(補助因子)として、DnaK2のシャペロン機能にとって必須の働きをするだけではなく、HtpGのコシャペロンとしてHtpG-DnaK2シャペロン系の共同作用にとって重要な働きをするのではないかという新規な仮説を立てて、その実証を試みてきた。プルダウン法等により、HtpGはJドメイン(DnaKとの相互作用ドメイン)以外の領域と相互作用することを明らかにし、さらにDnaJ2はHtpGと基質との相互作用を弱めることを示唆する結果を得た。これらの結果は、DnaJ2がHtpGのコシャペロンとして、HtpGの基質解離を促してそのシャペロン作用を調節することを示唆するものである。
我々はさらに、GroEL-DnaK2-DnaJ2-HtpGシャペロンネットワークを仮定し、その存在を実証すべく研究を進めてきた。本年度の成果は、GroELとHtpGの新規な物理的相互作用を検出したことである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

我々は、HtpGがDnaK2と協調的にシャペロン作用することを明らかにしたが、本年度は、この新規HtpG-DnaK2シャペロン系の制御機構を明らかにする上で重要な知見を得た。その知見とは、HtpGとDnaK2の(ATPase)活性比とモル比により共同作用が調節されうるというものである。
さらに、シアノバクテリアの二種類のGroELホモログのうちの一つ(GroEL1)だけが単量体でHtpGと相互作用するという新規な結果を得た。これは、本研究課題で仮定したGroEL-DnaK2-DnaJ2-HtpGシャペロンネットワークの存在を支持するもので、今後の研究の発展につながるものであると評価される。

今後の研究の推進方策

平成26年度後半になって、GroEL1単量体とHtpG(二量体)の新規な物理的相互作用を検出した。この知見を発展させるためには、このGroEL1-HtpG複合体形成を種々の条件・方法等で確認する必要がある。その理由は、GroELは安定な14量体を形成して機能すると一般的に考えられているので、GroEL1単量体とHtpGの相互作用機構は極めて新規なものであり、慎重に実証していかねばならないからである。この物理的相互作用を確認後、相互作用によってお互いのATPase活性やシャペロン機能が変化する(調節される)ことを明らかにし、これらの結果をまとめて、学会・学術論文等で発表する予定である。

次年度使用額が生じた理由

平成26年度に、本研究の実施計画の一つとしてあげた「HtpG-DnaK2-GroEL複合体の解析」を遂行し、その結果を学会等で発表する予定であったが、26年度後半になってシアノバクテリアの二種類のGroELホモログのうちの一つ(GroEL1)だけが、単量体に解離した後にHtpGと相互作用するということを示唆する、極めて興味深い結果を得たので、計画を変更して、平成27年度にこの結果を確認し、よりインパクトの高い発表等を行うこととしたため、未使用が生じた。

次年度使用額の使用計画

平成26年度に行った非変性電気泳動法による解析に加えて、他の方法も用いて実験を行い、GroEL1の単量体がHtpG(二量体)と相互作用して複合体を形成することを確認する。GroELは安定な14量体を形成して機能すると一般的に考えられているので、この複合体形成は新規なメカニズムで起こるものと思われる。これらの結果をまとめて、学会等での発表を平成27年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件)

  • [雑誌論文] Goniothalamin enhances the ATPase activity of the molecular chaperone Hsp90 but inhibits its chaperone activity.2015

    • 著者名/発表者名
      Yuhei Yokoyama, Aguru Ohtaki, Ibrahim Jantan, Masafumi Yohda, Hitoshi Nakamoto
    • 雑誌名

      The Journal of Biochemistry

      巻: 157 ページ: 161-168

    • DOI

      10.1093/jb/mvu061

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] シアノバクテリアHsp90とHsp60の相互作用2015

    • 著者名/発表者名
      石津光暉,Andreas Horn,仲本準
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学・世田谷キャンパス
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-18
  • [学会発表] 分子シャペロンHtpG(Hsp90)とDnaJ(Hsp40)の相互作用の解析2015

    • 著者名/発表者名
      石川凌,仲本 準
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学・世田谷キャンパス
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-18
  • [学会発表] シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC7942における2種類のClpB(Hsp100)の生化学的解析2014

    • 著者名/発表者名
      一杉祐太,仲本準
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-27
  • [学会発表] 異なる環状リポペプチド化合物が原核及び真核生物の分子シャペロンHsp90に及ぼす影響2014

    • 著者名/発表者名
      鈴木貴裕,横山雄平,森川正章,仲本準
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-27
  • [学会発表] シアノバクテリアHsp70 (DnaK2)とHsp90 (HtpG)及びリン脂質との特異的相互作用2014

    • 著者名/発表者名
      Hitoshi Nakamoto, Kensaku Fujita, Aguru Ohtaki, Saaimatul Huq, Keigo Sueoka, Viktoria Varvasovszki, Attila Glatz, Zsolt Torok, Ana-Maria Pilbat, Ibolya Horvath, Laszlo Vigh
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-27
  • [学会発表] シアノバクテリアのストレス耐性とシャペロニンGroEL22014

    • 著者名/発表者名
      中村優介,Saaimatul Huq,仲本準
    • 学会等名
      2014年度日本農芸化学会関東支部大会
    • 発表場所
      埼玉大学
    • 年月日
      2014-10-18 – 2014-10-18
  • [学会発表] Prokaryotic Hsp90/Hsp70 chaperone machinery2014

    • 著者名/発表者名
      Hitoshi Nakamoto, Aguru Ohtaki
    • 学会等名
      7th International Conference on the Hsp90 Chaperone Machine
    • 発表場所
      Abbey Seeon, ドイツ
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-19
  • [学会発表] Naturally occurring small-molecule activators of Hsp902014

    • 著者名/発表者名
      Yosuke Amaya, Hitoshi Nakamoto
    • 学会等名
      7th International Conference on the Hsp90 Chaperone Machine
    • 発表場所
      Abbey Seeon, ドイツ
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-19
  • [学会発表] Amphitropic DnaK2: Its association with Hsp90 and lipid membrane in cyanobacteria2014

    • 著者名/発表者名
      Hitoshi Nakamoto, Kensaku Fujita, Aguru Ohtaki, Saaimatul Huq, Keigo Sueoka, Viktoria Varvasovszki, Attila Glatz, Zsolt Torok, Ana-Maria Pilbat, Ibolya Horvath, Laszlo Vigh
    • 学会等名
      FASEB Science Research Conference ‘Protein Folding in the Cell’
    • 発表場所
      Vermont, 米国
    • 年月日
      2014-07-20 – 2014-07-25
  • [学会発表] シアノバクテリアの分子シャペロンと光合成2014

    • 著者名/発表者名
      仲本準
    • 学会等名
      第5回光合成学会年会
    • 発表場所
      近畿大学農学部・奈良キャンパス
    • 年月日
      2014-05-30 – 2014-05-31

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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