研究課題/領域番号 |
24580103
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
折田 和泉 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (70525964)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ポリヒドロキシアルカン酸 / メタノール |
研究概要 |
本研究は、次世代資源であるメタノールを原料にして高物性を有する共重合ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を効率的に生産するための微生物育種を目的として、1)代謝工学的手法を用いた代謝改変と2)転写制御因子であるσ70のランダム変異を加える包括的な転写機構の改変を実施している。 まず、代謝工学的手法を用いた代謝改変として、本年度は炭素数6の第二モノマーを供給することが期待出来るエノイル-CoAレダクターゼ(Ter)に着目して、そのクローニングとTer導入用宿主の構築を行った。すでに報告されているTerと相同なMethylobacillus flagellatus由来遺伝子をクローニング後、大腸菌組換え型酵素を調整して活性測定を行った結果、FADを添加したときにクロトニル-CoAを基質とする活性を検出した。またTerと競合する反応を遮断するために、育種の宿主として用いているMethylobacterium extorquensのクロトニル-CoA レダクターゼ/カルボキシラーゼ遺伝子を相同組換えにより破壊した株を取得した。 次に、σ70ランダム変異による包括的な転写機構改変では、エラープローンPCRの条件検討を行うとともに、制限酵素処理やライゲーションなど回収率低下の原因となる操作を回避出来るMEGA primer WHOLe Plasmid (MEGA-WHOP)法の確立を目的とした研究を行った。MEGA-WHOPに用いるMEGAプライマーをエラープローンPCRによって調整し、プラスミド合成のためのPCRの最適化を行った結果、大腸菌を宿主にした形質転換では良好にコロニーが出現した。一方で、M. extorquensを宿主にした形質転換では大腸菌を用いたときに比べて形質転換効率が低く、コンピテントセルの調整法などの改善が必要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では目標達成のために、二つの方針1)代謝工学的手法を用いた代謝改変、2)転写制御因子であるσ70のランダム変異を加える包括的な転写機構の改変をとっている。1)では代謝改変に用いるための候補遺伝子についてクローニングおよび活性の確認に成功し、2)ではライブラリー構築のための条件検討が大旨終了したことから、本研究は順調に進行しているといえる。一方で、本研究では代謝改変の宿主として複数の微生物種を用いる予定であったが、現段階では1種類の微生物のみ用いている。この点では当初の計画通りには進めておらず、今後の検討課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、1)代謝工学的手法を用いた代謝改変、2)転写制御因子であるσ70のランダム変異を加える包括的な転写機構を柱とした研究を実施する。 まず、代謝工学的手法を用いた代謝改変では、これまでにエノイル-CoA レダクターゼ(ter)のクローニングおよび宿主の取得に成功したことから、ter遺伝子を宿主に導入し、メタノールを炭素源とした培養を行う。また、Terの基質となるクロトニル-CoA量の増大を目的とした代謝改変を行う。 σ70ランダム変異による包括的な転写機構改変では、これまでの条件検討によりライブラリー作製法の検討が大旨終了したことから、今後はライブラリーを用いたスクリーニングを行う。申請者らはこれまでに、PHAの第二モノマー前駆体がPHA合成以外に使われる経路を遮断した組換え株を取得しているが、これらはメタノール培地で生育することが出来ない。そこで、これらの組換え株をスクリーニングの宿主とすることでメタノール資化能を回復した株の取得を目指す。さらに、高メタノール培地や菌体内のPHAを染色可能なNile Redを含有する培地を用いることで、メタノール生育能やPHA合成能が強化した株のスクリーニングを行う。望ましい変異体が取得された後は、トランスクリプトームまたはプロテオーム解析に供することで発現量が変化した遺伝子を特定し、従来法を用いた代謝改変にフィードバックさせるなどさらなる育種を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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