研究課題/領域番号 |
24580105
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
池田 正人 信州大学, 農学部, 教授 (00377649)
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研究分担者 |
竹野 誠記 信州大学, 農学部, 助教 (30422702)
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キーワード | コリネバクテリウム・グルタミクム / 還元力 / NADPH / GapN |
研究概要 |
現在までに育種しているGapN発現株はNADHとATPの両産生ステップをNADPHのみの産生ステップに置換したため、理論上、還元力の面で有利であるが、エネルギーの面で不利になる。もし、エネルギーをより多く要する生育フェーズでは元来のGapA依存、還元力をより多く要する生産フェーズではGapN依存となる菌株を育種できれば、生育と生産により適した代謝系になるはずである。そこで、そのような高性能な菌株を目指して、以下の2通りの方法により、GapN発現株に条件発現型のGapA遺伝子を導入してGapN&GapA両用型宿主を育種した。 1)ts発現型GapAプラスミド(複製が温度感受性)を有するGapN発現株の育種: 低温で培養してGapAを発現させつつ生育させた後、高温にシフトしてGapAプラスミドを脱落させ、以降の物質生産はGapN依存的に行うプロセスが成立するかどうかを評価した。シード培養および本培養の温度条件を種々検討した結果、シード培養を25℃、本培養を32℃で行うことで狙い通りの生育とプラスミド脱落が起こることがわかった。 2)イノシトール誘導型GapA遺伝子をゲノムに組み込んだGapN発現株の育種: コリネ菌はグルコース共存下でもイノシトールが存在すると、イノシトール代謝系遺伝子を誘導発現してイノシトールを代謝する。この知見に基づき、イノシトール誘導型プロモーターの支配下にGapA遺伝子を配してGapN発現株のゲノムに組み込み、GapNとGapAの両用型宿主を育種した。この株を用い、イノシトールの初発添加量に応じてGapA発現期間を制御するプロセスが成立するかどうかを評価した。その結果、シード培養に少量のイノシトールを添加するだけで、本培養では高いリジン生産能を維持しつつ、生育悪化も解消され、期待通りのプロセスが成立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画では以下の2点を掲げた。両項目とも計画通りに実施して期待値に近い結果を得ることができたため。 1. ts発現型GapAプラスミド(複製が温度感受性)を有するGapN発現株の育種 2. イノシトール誘導型GapA遺伝子をゲノムに組み込んだGapN発現株の育種
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今後の研究の推進方策 |
【ペントースリン酸経路の遮断とその発酵特性解析】 以上のようにして育種した宿主は、ミュータンス菌同様、還元力をペントースリン酸経路に依存しなくても済む代謝系になっているはずである。そこで、実際に同経路の初段酵素グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子を破壊して、脱炭酸を伴うペントースリン酸経路に依存しないミュータンス菌型の中央代謝系を持つコリネ菌を育種する。この代謝工学の生理および物質生産への影響を検討する。
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