研究課題/領域番号 |
24580106
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小嶋 政信 信州大学, 農学部, 教授 (20153538)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | キノコの光応答 / ヒラタケ菌糸 / 青色光刺激 / シキミ酸 / メタボローム解析 / 代謝経路の光制御 / 遺伝子発現解析 / 発光ダイオード |
研究概要 |
1.青色光刺激による時系列遺伝子発現解析結果 ①植物育成装置内で暗所培養した菌糸体コロニーに,時系列で青色光照射した後,市販のRNA抽出キットを用いて,菌糸体から全RNAを抽出した。②委託解析により、カスタムマイクロアレイを作成した。上記①の実験により抽出した全RNAを用いて,時系列遺伝子発現解析実験を実施した。③この実験から、青色光刺激により発現量が誘起される遺伝子群と抑制される遺伝子群を約200種ずつ発見した。④発見した約400種の光応答遺伝子には、遺伝子がコードするタンパク質・酵素の機能が全く不明である遺伝子が数多く含まれることがわかった。 2.シキミ酸の抽出方法と分析条件の構築 ①シキミ酸分析用のHPLC分析カラムとして、移動相として用いる溶媒の組成や分離能、また価格から、GLサイエンス製Intersil HILIC(5μm,4.6 x 250 mm)が最適であることがわかった。シキミ酸定量のための内部標準物質として、適切な化合物が見つからなかったため、絶対検量線を作成してシキミ酸を定量した。②2011年4月に行ったメタボローム委託解析でのシキミ酸抽出条件を参考にして,実験室におけるヒラタケ菌糸からシキミ酸を簡便に抽出する最適条件を確立した。③上記①と②により構築された分析条件により、青色光刺激によるシキミ酸蓄積量の時系列変化を解析した結果、光照射6時間後から明瞭に蓄積量の増加が確認され、照射36時間後には、1kgの菌糸体あたり0.4g蓄積されることが確認された。④上記③の実験結果から推察すれば、菌糸への光刺激によるシキミ酸の製造方法は,周年での安定生産が可能であること、従って年間あたりの製造量は、トウシキミからの約3倍になると見積もられることから、トウシキミからの抽出法の代替法として優位性があると評価された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.カスタムマイクロアレイを用いて網羅的に青色光応答遺伝子を解析することに成功したが、発見された約400種の遺伝子の機能については不明な遺伝子が多いため、ヒラタケ菌糸の青色光応答メカニズムを解明するには至っていない。 2.ヒラタケ菌糸に青色光刺激を与えることにより蓄積されたシキミ酸量を、実験室において簡便に分析できる条件が確立されたため、光環境条件を変えてシキミ酸蓄積量変化を追跡できるようになった。また青色光照射36時間の結果から、タミフル製造原料となるシキミ酸の新規製造法として有望であることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.菌糸生長段階に及ぼす光波長効果と光強度効果の解析 緑色光刺激により発現が誘起または抑制される特有な光応答遺伝子の有無については,いまだ解明されていない。そこでカスタムマイクロアレイを用いて,緑色光応答遺伝子を網羅的に解析する。 2.シキミ酸代謝経路に及ぼす光質効果の解析 ①青色光,緑色光,赤色光および遠赤色光を照射しながら培養した菌糸体コロニーから,シキミ酸を抽出して定量し、光質効果を解析する。 ②青色光刺激を与えた場合のシキミ酸生合成量と比較して,シキミ酸代謝経路に及ぼす光質効果を解析する。 ③青色光強度を変えて、シキミ酸蓄積量変化との相関性を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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