研究概要 |
未解明であった7遺伝子(chiA, chiB, chiH, chiJ, chiK, chiM, chiO)について、大腸菌を宿主に発現させた結果、ChiA, ChiB, ChiH, ChiM, ChiOの5種の組変え酵素は通常報告されているエンド型キチナーゼと類似した分解様式を示した。一方、ChiJとChiKについては、N-acetyl-D-glucosamine (GlcNAc)6量体に対する反応生成物を分析した結果、新しく生じた還元末端はβアノマー配位であることから保持型の分解様式を示すことがわかった。また、このときGlcNAc2量体を優先的に生成し、さらに不溶性のコロイダルキチンを基質に用いた場合にも反応初期からGlcNAc2量体が蓄積した。以上の結果より、ChiJ, ChiKはエンド型反応よりも、非還元末端側から連続的にGlcNAc2量体を切り出すprocessive型の反応特性がより強い酵素であることを明らかした。 ChiGはエンド型の分解様式を示しながら最終産物としてGlcNAcのみを与える新規な性質を示した。GlcNAc6量体に対する分解反応初期生成物をHPLC分析した結果、両末端側のグリコシド結合の分解によりGlcNAc単量体を生じていた。通常のエンド型キチナーゼの分解反応進行には、切断点の両側に最低2個のGlcNAc残基の存在が必要であるが、ChiGの場合は1個でも許容する柔軟性を示した。また、ChiGにはファミリー18キチナーゼの触媒中心モチーフ配列Asp-X-Asp-X-Gluが保存されていた。これら3つの酸性アミノ酸残基に点突然変異を導入した結果、Glu残基の変異でのみ活性が大きく低下したことから、本残基が活性中心であることが明らかとなった。
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