研究実績の概要 |
新属新種の強力なキチン分解細菌Chitiniphilus shinanonensis SAY3株より、当初は15個のキチン分解酵素遺伝子(chiA-chiO)の存在を報告したが、全ゲノム配列を解読した結果、新たに34個の遺伝子(chi1-chi34)を見出した。合計49個ものキチン分解酵素関連遺伝子を保持することから、本株はキチン分解に特化した細菌種であり、そのキチン分解システムに興味が持たれた。これまでに約7割の遺伝子を大腸菌宿主で発現させ、組換え酵素の性質を調べた結果、以下の新規酵素を見出した。 ChiGは基質キチンに対してエンド型の分解様式を示しながら、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の2量体を単量体まで分解するという新規な性質を示した。ChiJ, ChiKはエンド型の分解よりも非還元末端側からGlcNAc2量体を連続的に切り出すprocessive型の反応特性を有した。ChiLは GlcNAcの3量体を全て2量体のみに変換する顕著な糖転移活性を有していた。組換えChiLの結晶を得ることに成功しており、今後酵素の立体構造と本酵素の糖転移反応機構を明らかにする予定である。Chi33は不溶性の基質キチンに強く結合し還元糖を生成せずに基質の低分子化が起こったことから、加水分解ではなく酸化型の分解を触媒することがわかった。 グラム陰性広宿主域ベクターpMo130を用いて、挿入遺伝子断片とSAY3株ゲノムDNAとの間で相同組換えを起こさせることにより、目的遺伝子を完全に破壊できることを確認した。本技術は、未知遺伝子の機能を探る上で有効なツールとなる。実際にエキソ型酵素N-アセチルグルコサミニダーゼ(GlcNAcase)をコードする唯一の遺伝子と予想されたchiIの破壊株を作成したところ、2%程度の残存活性を示したことから第二のGlcNAcaseの存在が明らかとなった。
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