研究課題/領域番号 |
24580108
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 哲夫 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20170334)
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キーワード | SUN familyタンパク質 / 糸状菌 / 分泌酵素 |
研究概要 |
アミラーゼ高生産変異株として取得されたA. nidulans AHP1102は、sunA遺伝子とAN0430遺伝子間での染色体の転座により生じたことが前年度の研究で明らかとなったため、AN0430遺伝子の変異の影響を避けるために、sunA破壊株を構築した。sunA破壊株はAHP1102と同様に、頻繁な湾曲やこぶ状の構造など菌糸の形状異常や、カルコフルオールホワイト、beta-コンゴーレッドに対する感受性を示した。また、AHP1102と同様にアミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼの高菌体外生産も認められた。破壊株のこれらの形質は、SunAが細胞壁恒常性に関与することを示唆しており、破壊株における分泌酵素の生産性向上は細胞壁にトラップされた酵素の遊離によると考えられる。野生株と破壊株で菌体外タンパク質を比較したところ、破壊株でのみ見られるバンドが複数存在していた。これは細胞壁タンパク質の漏出を示唆している。一方、sunA高発現株についても検討を行ったが、上記いずれの項目についても野生株と同等であった。 SunAが細胞壁多糖に働く酵素であるかどうか検討するため、大腸菌を宿主とした生産を試みた。通常の条件では不溶性であったが、Hsp70とHsp40の共発現で可溶化に成功した。しかし、シャペロンの解離が起こらなかったため、低温誘導型のシステムに変更し、微量ながら可溶性SunAを取得した。現在、予備実験の段階であるが、ラミナリビオースを基質とした際に、糖転移産物と見られる反応産物が検出されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SunAが細胞壁恒常性に関与することがほぼ示され、破壊株では細胞壁のゆるみにより細胞壁タンパク質が漏出していると考えられる段階にいたった。そこで、糸状菌内での機能解析から、大腸菌で発現したSunAタンパク質の酵素としての機能解析に少し方向性をシフトしたが、予備的な検討では期待できる結果を得ている。リコンビナントタンパク質を用いた解析が可能となれば、飛躍的に研究が進展することが見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
SunAの機能についてはリコンビナントを用いて変異導入などにより解析していく予定である。一方、応用については液体培養とプレート培養で大きなsunA破壊の効果の違いが出ており、後者の方がはるかに効果が高い。そこで、我が国で酵素生産に用いられている固体培養でsunA破壊の効果を検証していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、SunA抗体を作製し、免疫学的手法による生産レベルの確認や局在部位の同定を行う予定であったが、本課題とは異なる研究プロジェクトでのA. nidulansの網羅的発現解析が行われた結果、SunAのmRNAレベルが明らかとなり、免疫学的手法を用いなくとも検出可能である目途が立ったため。 当該年度後半にサーマルサイクラーが故障し、研究遂行にやや支障が生じている。そのため、サーマルサイクラーの購入に一部を充て、残りを消耗品の購入に充てる予定である。
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