研究課題/領域番号 |
24580112
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
石川 周 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (30359872)
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キーワード | 細胞分裂 / 枯草菌 / SepF / FtsZ |
研究概要 |
細菌の細胞分裂は、FtsZが細胞中央でZ-ringを形成し、収縮することにより細胞膜を内側に引っ張り込むことによりおこる。FtsZには細胞膜に結合する領域が無いため、FtsZと細胞膜を繋ぐ蛋白質が必要である。大腸菌では、FtsAがその役割を果たすことが知られている。細胞分裂は細胞の増殖に必須であるために、大腸菌ではFtsZ欠損に加えて、FtsA欠損も致死となる。一方、枯草菌ではFtsAは必須ではない。我々はこれまで、枯草菌にはFtsAの機能的ホモログのSepFが存在するため、両方を欠損させてはじめて致死となることを明らかにしてきた。 本年度の研究では、SepFの機能の分子メカニズムを解明することを目的とした。酵母2ハイブリッド解析によりFtsZ、およびSepF自身とのの相互作用領域を決定した結果、いずれもC末端ドメインであることがわかった。さらにJan Lowe博士とLeendert Hamoen博士らとの共同研究の結果から、C末端ドメインだけでもin vitroで巨大なチューブ状の構造体を形成すること、さらにC末端ドメインの結晶構造解析の結果からは、C末端ドメインはdimerを基本単位としてポリマー化することがわかった。さらに、全長のSepFはリポソームへ結合することができるが、C末端ドメインだけではリポソームに結合できないこと、SepFのC末端ドメインだけではFtsA欠損との合成致死を相補できないが、C末端ドメインに別の蛋白質の膜結合領域を付加すると、合成致死性を相補できるということがわかり、N末端領域が膜結合領域であることも証明できた。このように、SepFがFtsZを細胞膜にアンカーするメカニズムを解明することができ、その論文は2013年Proceedings of the National Academy of Sciencesに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SepFの分子メカニズムを解明することができ、成果も論文として発表することができた。また、EzrAにかんしても当初計画していた以下の研究を実施した。① FtsA-EzrA間の相互作用を失う変異を酵母2ハイブリッド解析により特定した。②「FtsZ-GFP発現株は温度感受性となるが、ezrA欠損により相補できる。この理由は、EzrAが直接FtsZをと相互作用し、ポリマー化を阻害するためである」という定説がある。我々は、EzrAはFtsZと直接相互作用するのではなく、FtsAを介してFtsZを制御しているという結果を得ている。我々の結果を証明するためには、この定説の出発点となった温度感受性となるFtsZ-GFP発現株における現象を説明することが重要である。そこで、FtsZ-GFPにHis-tagを付加して、in vivo複合体解析を行うのに必要な全ての株を準備した。この様に計画通り、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、EzrAがFtsZと直接相互作用するのではなく、FtsAと直接相互作用することを、in vivoの複合体解析、酵母2ハイブリッド解析、免疫顕微鏡の結果から示してきた。EzrAがFtsZに直接結合しFtsZのポリマー化を阻害するという定説を覆すためには、その出発点となったFtsZ-GFP発現株が高温で細胞分裂阻害が起こる原因を説明する必要がある。そこで、FtsZ-GFP-His発現株を使用し、細胞分裂複合体を詳細に調べる。我々の予想では、FtsZ-GFPが高温で細胞分裂阻害を起こす理由は、FtsZ-GFP はFtsAとSepFの結合部位であるFtsZのC末端にGFPを融合したため、FtsAとSepFとの相互作用が弱くなっており、高温で特に強い細胞分裂阻害がみられるためであると考えている。一方、EzrAを欠損させた場合には、FtsAとFtsZの相互作用の強くなるために相補されるという仮説をたてている。これらのデータと、さらにFtsAと相互作用しなくなる変異型EzrAの詳細な解析を通じて、細胞分裂におけるEzrAの役割を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究は、SepFの研究を完成させるための実験、およびSepFの論文の執筆が中心に行った。そのために、EzrAの研究に必要な消耗品、論文作成の為の費用の分を使用しなかった。ただし、この予算は、次年度にEzrAの研究を遂行するのに必要な経費である。 次年度使用額は、前年度に計画していたEzrAの研究の完成、論文の執筆の費用にあてる。また、SepF、EzrAの両方を包括した研究にも取り組み、その成果を学会・論文等で発表するために使用する。
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