細胞分裂装置を構成するEzrAは、膜貫通領域を持つこと、さらにFtsZと直接結合するという報告があることから、FtsAやSepFのようなFtsZを細胞膜につなぎとめる役割を担っている可能性が示唆されてきた。しかし我々は、「EzrAがFtsZと直接結合せず、FtsAと直接結合する」ことを前年度までに示してきた。しかし、このデータだけでは過去のデータの否定に終始してしまうので、EzrAとFtsAの結合の生物学的な意義を提示する必要があった。そこで、今年度は、EzrAと結合しなくなる変異を、酵母2ハイブリッド解析によりスクリーニングし、解析した。FtsZとの結合は保持しつつもEzrAとの結合を特異的に失った変異型FtsAを3つ取得したが、全てFtsZとの結合部位とは異なるサブドメインに存在していた。 実際の枯草菌細胞内でも、変異型FtsAはEzrAとの結合能が大幅に減少していたが(細胞分裂装置の複合体解析に基づく)、その変異株は、SepFを枯渇させても増殖することができた。EzrAとSepFの二重欠損は、理由は不明であるが合成致死となることが知られている。このことを考慮すると、変異型FtsAは、SepFが無い状態でも、EzrAの欠損を相補できる形質を獲得したと考えられる。EzrA欠損はZ-ringを安定化させ、Z-ringの収縮速度を低下せせることが知られている。このことを考慮すると、EzrAは、我々が見出したFtsAとの結合を介してZ-ringのダイナミズムを促進している可能性が考えられる。
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