研究概要 |
本研究では、白麹菌 Aspergillus kawachii を特徴づけている性質の一つであるクエン酸高生産機構の解明を目指す。また、得られた情報を活用してイタコン酸を高生産する白麹菌の育種を試みる。本年度は以下の成果を得た。 1.白麹菌のクエン酸高生産関連遺伝子の破壊株の構築と破壊株の評価. 白麹菌のクエン酸高生産に影響を及ぼす遺伝子として,ミトコンドリア局在の推定トランスポーター(TP)をコードする11遺伝子,細胞膜局在の推定TPをコードする4遺伝子,TCA回路中の代謝酵素をコードする6遺伝子,推定転写制御因子をコードする8遺伝子,機能未知の3遺伝子,および解糖系酵素の1遺伝子,合計33遺伝子を選抜した。これらのうち,20種の遺伝子の破壊株を構築した。破壊株と野生株の生産する有機酸量と比較することで,クエン酸高生産,あるいは他の有機酸生産に影響を及ぼす遺伝子をスクリーニングした。その結果、細胞膜局在アニオンTP(2種),推定ミトコンドリア膜局在アミノ酸TP,そして推定ミトコンドリア膜局在アデニンヌクレオチドTPをコードする遺伝子の破壊株において,クエン酸の生産量が野生株に比べ 2 倍以上増加した。一方,リンゴ酸脱水素酵素遺伝子の破壊によって,クエン酸生産量が著しく減少した。 2.イタコン酸生産菌のイタコン酸合成遺伝子の同定. イタコン酸生産菌として我が国で最初に分離された A. itaconicus NBRC 4336株のゲノム DNA 情報を取得した。得られたドラフトゲノム情報から、A .terreus の cadA (ATEG_09971)と相同性を示す配列を探索した。その結果、2つの遺伝子AicadA1 (68% identity)、AicadA2 (45% identity) を見いだした。
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