研究課題
本研究では、我が国の伝統的発酵食品製造に用いられる白麹菌 Aspergillus kawachii を特徴づけている性質の一つであるクエン酸高生産機構の解明を目指した。また、クエン酸にかわり有用有機酸であるイタコン酸を高生産する白麹菌の育種を試みた。白麹菌のクエン酸高生産に関係する遺伝子の破壊株の構築とクエン酸生産性の影響.比較ゲノム及びマイクロアレイ解析の結果、白麹菌のクエン酸高生産に関係する遺伝子として、36の候補を選抜した。35の遺伝子遺伝子破壊株を構築した。白麹菌破壊株を用いて、固体培養後に抽出される有機酸量を調べた。解析対象の34種の破壊株におけるリンゴ酸量の変動は、24の破壊株で認められたが、クエン酸量の変動は6種の破壊株だけに認められた。推定細胞質リンゴ酸脱水素酵素遺伝子、推定C6-転写因子をコードする遺伝子、機能未知遺伝子、及び推定ミトコンドリア局在コハク酸-フマル酸輸送体においては、親株に比べクエン酸量が減少しており、逆にリンゴ酸量が増加していた。また、MATE efflux family proteinをコードする2つの遺伝子破壊株では、ともにクエン酸量が増加し、1つの破壊株でクエン酸量が減少した。クエン酸生産量とリンゴ酸生産量に逆相関があった。イタコン酸を高生産する白麹菌の育種。イタコン酸生産菌Aspergillus itaconicus のcis-アコニット酸からのイタコン酸への合成反応を触媒するCad をコードすると推定されるcadA 及び cadB 遺伝子を白麹菌 gpdAプロモーター下流に挿入して、白麹菌のargB遺伝子座に部位特異的に導入した。クエン酸高生産用の液体培地で、両cad遺伝子保有株のイタコン酸量を調べたところ、イタコン酸の生産は認められなかった。クエン酸からCadの実際の基質となるcis-アコニット酸への高効率な変換が必要であると推察される。
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http://www.brs.kyushu-u.ac.jp/~fcmic