研究課題
これまでの日本酒の品質を向上させる研究の多くは最終的にエタノール濃度18-20%を生成させる条件に集中していた。従って低アルコールの日本酒、すなわち低アルコール清酒を製造するための技術が業界で蓄積しているとはいいがたい。しかし生活習慣病が多くなっている現在、アルコール濃度が低くかつ品質もよい日本酒の製造技術の基盤的な技術知見を普及させていくことが国民の健康の観点から必要である。清酒醸造中にピルビン酸濃度は前半で極大値を取りその後酵母に資化されて漸減していくが、前半でもろみを上槽するとピルビン酸が資化されきらずに残存しオフフレーバーにつながる。このことから品質のよい低アルコール清酒を製造するためにはピルビン酸を低減させる製造技術が必要である。そこでピルビン酸のミトコンドリア輸送阻害剤に耐性を示す清酒酵母を分離しピルビン酸低減清酒酵母を育種した。しかしこの酵母のピルビン酸低減メカニズムは明らかになっていなかった。そこで本研究ではこの酵母のピルビン酸低減メカニズムを解明することを目的とした。ピルビン酸低減清酒酵母のミトコンドリアや代謝を解析した結果、ミトコンドリアの呼吸活性やミトコンドリアにおける炭素代謝が増加していることを明らかにした。この結果から、この酵母はミトコンドリア代謝が上がったためにピルビン酸が低減したと考えられた。さらにその責任遺伝子を探るためピルビン酸低減清酒酵母のゲノムを解析しピルビン酸低減清酒酵母から一倍体を多数取得した。その結果、ピルビン酸低減性が優性形質であることやピルビン酸低減に関わる遺伝子に関わる情報を示唆する成果が得られた。これらの成果はリアルタイムPCRなどで再現性を確認し、論文として投稿する準備中である。今後はピルビン酸低減性を示す一倍体のゲノムを解析しピルビン酸を低減させる遺伝子を特定したいと考えている。
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