申請者は、先行研究により焼酎酵母において形質転換が可能であり、PCRにて増幅したカナマイシン耐性遺伝子(Kanr)により、焼酎酵母の対立遺伝子のうち一方を破壊できること、さらにはヘテロ接合性消失(LOH)が可能であることを示してきた。H24年度の研究では、LOHを誘発する要因について検索を行い、紫外線照射ならびにヒートショック処理により有意にLOHの頻度の上昇を認めた。さらに最適条件を検討し、紫外線を30秒照射後、YPD液体培地にて回収し、さらに24時間振とう培養することで数十倍の効率でLOHが生じることを見出した。 H25年度には、我々が先行して行った焼酎酵母(鹿児島2号)のドラフトゲノム解析による配列情報をもとに破壊カセットをPCR、フュージョンPCRによって作成した。リジン生合成に関与する遺伝子LYS5の両側にウラシル生合成遺伝子URA3をオーバーラップする領域を持たせて二分割した断片を付加し、さらに分割したURA3の両方の外側に相同な配列をもたせた。本破壊カセットをターゲット遺伝子(LEU2)の配列を付加したプライマーでPCR増幅し、焼酎酵母(ura3Δ/ura3Δ lys5Δ/lys5Δ株)を形質転換し、その後LOHを誘発することでLEU2の2重破壊株を取得した。H26年度には、LEU2の2重破壊株の破壊カセット内に2カ所ずつ配置した相同な配列間での組み換えにより破壊カセットが抜け落ちるループアウトを利用することで、LEU2ダブルループアウト株を取得することができた。さらに、この株を用いてADE2の2重破壊株、ADE2ダブルループアウト株を取得することにも成功し、同じ破壊カセットを用いた繰り返し利用可能な遺伝子破壊システムの構築に成功した。
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