研究課題/領域番号 |
24580119
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
片山 高嶺 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (70346104)
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研究分担者 |
日高 將文 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00584848)
廣瀬 潤子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (40381917)
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キーワード | ビフィズス菌 / 母乳オリゴ糖 / 共生 / 共進化 |
研究概要 |
本申請課題では、ビフィズス菌が発見されて以来100 年間にわたって未解明であった謎「母乳栄養児の腸管では何故ビフィズスフローラが形成されるのか」(ビフィズス菌とヒトの共生)を、ビフィズス菌による母乳オリゴ糖代謝の視点から解明するとともに、ビフィズス菌とヒトの共進化の分子基盤を探ろうとするものである。また、母乳オリゴ糖を人工乳へ添加することを目標に、母乳オリゴ糖の精密酵素合成法を開発することを目標としている。以下に平成25年度成果を記す。 ビフィズス菌Bifidobacterium longum subsp. longumから、母乳オリゴ糖の資化に関わる新規な酵素「ラクト-N-ビオシダーゼ」を単離し、その諸性質の解明を行った。本酵素は、これまでに全く機能の推定されていなかった2つの遺伝子(lnbXとlnbY)によって構成されており、LnbYはLnbXのシャペロンとして機能することが明らかとなった。本酵素のホモログはデータベース上で10個程度と非常に少なく、また一部のビフィズス菌および腸内細菌にのみ保存されていた。このことから、本遺伝子は非常に限られた環境において進化してきた可能性が示唆された。 ビフィズス菌Bifidobacterium bifidum由来の1,2-a-L-フコシダーゼに変異を導入することにより、1,2-a-L-フコシンターゼへと変換した。本酵素を用いることで、b-フッ化フコースとラクトースから母乳オリゴ糖の主要成分である2'-フコシルラクトースを収率80%で合成することに成功した。本酵素反応は極めて位置特異性が高く、副産物は全く検出されなかった。 ビフィズス菌Bifidobacterium longum subsp. infantis由来のラクト-N-テトラオース-b1,3-ガラクトシダーゼのX線結晶構造解析を行い、分解能2.2Åで構造を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラクト-N-ビオシダーゼについては、これまでに知られている糖質分解酵素とは全く異なる発現様式や基質特異性を見出し、本分野に大きなインパクトを与えることとなった。また、フコシルオリゴ糖の合成についても、非常に高効率の変異体を取得することに成功した。これらのことは研究開始時には予想しえなかった程の大きな進展である。しかしながら、ラクト-N-テトラオース-b1,3-ガラクトシダーゼについては、その野生型酵素の構造を明らかとしたものの、最も重要な基質複合体構造の解析に成功しておらず、今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
ラクト-N-ビオシダーゼについてはX線結晶構造解析を行い、そのユニークな基質特異性の構造基盤を明らかとする。また、ラクト-N-テトラオース-b1,3-ガラクトシダーゼについても基質との複合体結晶を作製し、その特異性の基盤を明らかとする。フコシルオリゴ糖合成については、受容体としてラクトースのみならず他のオリゴ糖を使用し、母乳オリゴ糖合成のための利用可能性を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の成果として論文発表を行ったが、その際に請求された論文掲載費が予定より大幅に高額であったため、他の経費にて支払いを行った。そのために、10万円程度が未使用となった。 翌年度(最終年度)においては、2件程度の論文発表を行う予定であり、その際の支払いに充当する。
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