研究課題
本研究は、ビフィズス菌が発見されて以来100年間にわたって未解明であった課題「母乳栄養児の腸管では何故ビフィズスフローラが形成されるのか」を、ビフィズス菌による母乳オリゴ糖代謝の視点から解明するとともに、ビフィズス菌とヒトの共生・共進化の分子基盤を探ること、また、母乳オリゴ糖を人工乳へ添加することを目標に、母乳オリゴ糖の精密酵素合成法を開発することを目標とした。最終年度においては、1)Bifidobacerium longum由来の新規なラクト-N-ビオシダーゼがグロボ系やガングリオ系などの糖脂質糖鎖に作用する新規な活性を有していること、2)Bifidobacterium bifidumが胃ムチンタンパク質糖鎖の末端に存在するGlcNAcα1-4Gal構造に作用するユニークな酵素を有すること、および3)Bifidobacterium infantisが基質特異性の異なる3種類の糖質分解酵素ファミリー42を有していること、を明らかとし、それらについて成果報告を行った。また、Bifidobacterium infantisが有する糖質分解酵素ファミリー42の一つであるBga42Aについては、その特異性の構造学的基盤を解明するためにX線結晶構造解析を行い、アポ型および基質結合型の複合体構造を決定することに成功した(未発表)。本酵素はビフィズス菌が母乳オリゴ糖を分解する上で鍵となる酵素であり、遺伝子破壊株の作製等を行うことで、ビフィズスフローラ形成の分子基盤を解明することが可能となると考えられる。また、1,2-α-L-フコシダーゼを改変することにより、フッ化フコースとラクトースから収率85%以上で母乳オリゴ糖の主成分である2'-フコシルラクトースを合成することに成功した(未発表)。
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