研究課題/領域番号 |
24580121
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
宮内 啓介 東北学院大学, 工学部, 教授 (20324014)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 転写制御 / PCB / 細菌 / Rhodococcus |
研究概要 |
環境汚染物質であるポリ塩化ビフェニル(PCB)分解菌Rhodococcus jostii RHA1のPCB分解機構の完全解明を目標に研究をおこなっている。本菌のPCB分解遺伝子群の転写はビフェニル存在下で活性化されるが、申請者は、分解の中間代謝産物である安息香酸が同時に存在すると、分解遺伝子群の転写活性化が抑制されることを見出した。そこで、本研究では、この新規転写抑制機構の全容を解明する。 安息香酸以降の代謝に関与する分解遺伝子の破壊株を用いた解析により、抑制に関与する物質はカテコールであることが明らかとなった。そこで、本年度はまず始めにカテコール分解遺伝子catAをRHA1株に導入して発現させ、カテコールを分解させることによって転写活性化の抑制が解除されるかを解析することにした。その結果、catAを高発現させることで転写活性化の抑制が解除されることが明らかとなった。さらに、無機塩培地にビフェニルのみを炭素源として加えた培地で生育させたとき、野生株にベクターを導入したものより、catAを導入した株のほうがよい生育を示すことも確認された。栄養培地を用いたときは生育に差がみられないことから、catA導入株はカテコールを素早く分解することによって生育に正の影響を及ぼしたと考えられる。 この転写活性化抑制に関与する遺伝子を単離するため、RHA1株の遺伝子ライブラリーをRHA1株に導入し、転写活性化抑制が強くなる株をスクリーニングすることを計画している。今年度はそのためのベクタープラスミドを作製した。本プラスミドは大腸菌とロドコッカスのシャトルベクターであり、カナマイシン耐性遺伝子の下流にクローニングサイトを導入したものである。本ベクターを用いて大腸菌中にライブラリーを作製し、それをエレクトロポレーションでRHA1株に導入する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カテコール分解遺伝子の導入によって転写活性化抑制が解除されたという結果は、これまで破壊株とレポータープラスミドを用いて明らかにしてきたカテコールによる転写抑制という結果を裏付けるものであり、PCB分解遺伝子の発現に対する負の要因を取り除くことができたという意味でも、本研究において非常に重要な成果である。また、ライブラリー作製のためのベクターが完成したことで、スクリーニングをおこなう準備も整いつつある。以上のことから、計画は概ね順調に進んでいるといえる。一方で、変異株の作製については、lacZがRHA1中で働かないことが明らかとなり、ライブラリー導入を優先して実験をおこなうことにしたため、進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
RHA1株における、カテコールによるPCB分解遺伝子群の転写活性化抑制という表現型については、概ねデータが出そろった。あとは各遺伝子破壊株やcatA高発現株におけるカテコールおよびその前後の代謝物の蓄積を確認することが必要なので、今年度高速液体クロマトグラフィーとガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリーを用いて解析する。転写抑制に関与する遺伝子の単離については、まず24年度に作製したベクターを用いてDNAライブラリーを大腸菌中に作製する。大腸菌から精製したライブラリーをRHA1に導入し、安息香酸存在下での転写活性化抑制が強くなるクローンを単離し、クローン中のORFを同定する。同定されたORFに関しては破壊株を作製して転写抑制への関与を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の使用に関してはHPLC解析が遅れたためそれに関連する消耗品の購入をしなかったことと、3月に二名雇用を予定していた研究補助のアルバイトのうち、一名雇用できなかったことから、未使用の金額が発生した。HPLCの消耗品に関しては今年度実験をおこなうので使用する。アルバイト雇用分は今年度その分を雇用して使用し、研究を進めていきたい。25年度分に関しては当初計画通り執行する予定である
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