研究課題
前年度に引き続き、海洋研究開発機構から分譲された深海好圧性細菌について、細胞膜物性の解析を継続した。すなわち、低温・常圧培養した菌体を蛍光偏光プローブで標識し、時間分解蛍光偏光解消法によって膜の秩序因子と脂質アシル鎖の回転拡散係数を計測した。本年度はDPHを用い、単価不飽和脂肪酸における不飽和度の変化を鋭敏に検知しようと考えた。ところがDPHが培養液中で凝集してしまい、細胞膜を十分に標識することができなかった。そこでこれまで通りTMA-DPHをプローブとして用い、解析菌株を増やすことで膜構造と棲息深度や至適増殖圧力とのさらなる相関を図った。すなわち、S. oneidensis (0 m)、S. livingstonensis (0 m)、M. marina (1200 m)、P. profundum (2551 m)、M. abyssi (2815 m)、M. profunda (2815 m)、S. violacea (5110 m)、M. japonica (6353 m)およびS. benthica (6356 m)を解析対象とした。括弧内は棲息深度を示す。その結果、膜の秩序因子Sは棲息深度との間に大きな相関が見られないことがわかった。一方、脂質アシル鎖の回転拡散係数は、より深い海底に棲息する種ほど値が小さいことがわかった。すなわち、より高い圧力に適応した菌株ほど膜構造が剛直であることを示唆しており、昨年までの結果を支持した。なおM. japonicaのみ深部から分離されたにも関わらず、例外的に脂質アシル鎖の回転拡散係数が高かった。これはM. japonicaの至適増殖圧力が10 MPa程度と低く、必ずしも深海に適応していないことを反映しているのかもしれない。また、当初計画にはなかったが、膜物性と高圧下における微生物の増殖との相関を知るため、出芽酵母変異株の膜物性の解析を行った。興味深いことに高圧増殖可能な野生株では細胞膜が剛直であるのに対し、erg2株やerg6株では剛直性が低下していた。ところが、内膜系ではこの傾向が逆転していることがわかった。
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High Pressure Bioscience -Basic Concepts, Applications and Frontiers, Springer Subcellular Biochemistry (SBM)
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Stress Biology of Yeasts and Fungi: Application for Industrial Brewing and Fermentation, Springer
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doi: 10.1016/j.bbamem.2014.03.018