研究課題/領域番号 |
24580123
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小倉 光雄 東海大学, 海洋研究所, 教授 (80204163)
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キーワード | グルコース応答 / ECF シグマ因子 |
研究概要 |
前年度までの研究で、spx制御の標的は、degSプロモーターの-35と-10領域を含むコア領域である事が判明した。しかし、degSプロモーターのin vitro転写実験では、Spxの正の効果を確認することはできず、さらに未知の転写因子が必要であるか、あるいはSpxのリン酸化、アセチル化などの翻訳後修飾が必要である事が示唆された。一方、SpxによるdegS制御のin vivoにおける効果は未知であった。なぜなら、以前の研究で、DegUの制御下にある遺伝子の支配するphenotypeのspx変異による変動は報告されていなかったからである。本研究で報告者は、degSプロモーター活性がグルコースで数倍程度に誘導される事を見いだした。この効果は、グルコース応答のmaster制御因子CcpAには無関係であった。また、この誘導はspx破壊株では顕著に低下した。SpxがdegSのグルコース誘導に必要である事は、SpxによるdegS制御について初めて見いだされた形質である。この現象から、spx発現自体がCcpA非依存的にグルコース誘導を受けるのではないかと考え、spxオペロンが持つ2つのプロモーターのlacZ融合体をそれぞれ作製し確かめた所、予測が正しい事が確かめられた。Spx遺伝子プロモーターは、ハウスキーピングなSigAとECF シグマ因子であるSigM/X/Wの合わせて4つのシグマ因子で転写されている。このうちどのシグマ因子がグルコース誘導に責任があるのか調べた所、SigMとSigXがグルコース誘導に必要であり、驚いた事に、SigMとSigX遺伝子発現自体もグルコース誘導を顕著に受けている事が判明した。ECFシグマ因子は、細胞外シグナルをプロセスするシグマ因子として知られており、細胞内シグナルである栄養状態を感知する事は新規な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SpxによるdegS制御の具体的な現れとして、グルコースによるdegS誘導現象を見いだし、さらにspx遺伝子がsigM/X依存的にグルコース誘導を受ける事、また、sigMとsigXが細胞内シグナルである栄養状態を感知している事を見いだした事は予想外の成果である。この点を追求するために、ECFシグマの専門家など外部との共同研究を模索して行く予定である。また、degSUオペロンの発現制御自体も従来より追求してきた。その結果、新たにバイオフィルム形成のマスター制御因子SinRによるdegUプロモーターの発現制御を見いだした。SinRタンパク質は、degUプロモーターへ直接結合し、さらにSlrRとの複合体を形成していた。このプロセスを詳細に解析し論文発表した。
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今後の研究の推進方策 |
Spxのグルコース誘導という現象がDegU制御下にある遺伝子の支配する生命現象にどの程度関わっているかを調べて行く予定である。一方、副次的に見いだされたECFシグマ因子のグルコース誘導現象の更なる解析は、非常に興味深く、推進する予定である。グルコース誘導がいわゆるカタボライト制御であるのかどうかを各種炭素源のsigX/M-lacZ発現に及ぼす影響を調べる事で確定して行く。また、ECFシグマは全部で10種が枯草菌ゲノムにある事が知られているが、グルコース誘導を受けるものと受けないものを確定する。さらに、ECFシグマ因子はアンチシグマ因子により負に制御されているが、グルコース誘導が果たしてアンチシグマ因子に依存した制御で有るか無いかを、アンチシグマ因子の遺伝子破壊株を用いて確定する予定である。
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