研究の端緒であったclpP変異でdegSUプロモーターが活性化される現象の背後にあるシナリオを以下のように解明した。すなわち、spxがdegSUプロモーターを何らかの形で活性化している、その上、ClpXPがSpxを分解しているため、clpP変異導入でSpxタンパク量が増大し、degSUプロモーター活性があがる、またclpP spxの2重変異株ではdegSUプロモーター活性の低下がおこるという事が判明した。
今年度に実行したECFシグマ因子のグルコース誘導現象の更なる解析の結果、sigX/Mのグルコース誘導はいわゆるカタボライト制御ではない事が判明した。また、ECFシグマ因子は全部で10種が枯草菌ゲノムにある事が知られているが、残りの因子はグルコース誘導を受けなかった。ECFシグマ因子はアンチシグマ因子により負に制御されているが、sigX/Mのグルコース誘導はアンチシグマ因子にも依存していなかったので、未知の制御機構の存在を示唆した。
degSがグルコースによる発現誘導を受けている現象の解析過程で、degUも同じくグルコースによる発現誘導を受けている現象を見いだし解析した。その結果、カタボライト制御のmaster regulatorであるCcpAが直接degUに結合して、degUを活性化している事、及びDegU-Pを分解するClpCPがCcpA依存的にグルコースによる負の制御を受けており、このこともdegU活性化に寄与している事を明らかにした。また、従来より、degSUオペロンの発現制御の全体像も追求してきた。その結果、新たにバイオフィルム形成のマスター制御因子SinRによるdegUプロモーターの発現制御を見いだした。SinRタンパク質は、degUプロモーターへ直接結合し、さらにSlrRとの複合体を形成していた。このプロセスを詳細に解析し論文発表した。
|