研究概要 |
既知の微生物由来のコレステロールオキシダーゼ(COX)の中で、最も高い熱安定性、界面活性耐性、有機溶媒耐性を示すCOX (Chromobacterium sp.DS-1株由来)の探索に成功し、酵素の諸性質の解析、遺伝子解析、X線結晶解析による立体構造の解析を行ってきた。本研究では、DS-1株由来のCOXの触媒活性に関与する部位を同定して触媒機構を解明し、それらの知見をもとに、高安定かつ高活性なCOXを創製することを目的とした。COXの補酵素であるフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)近傍のアミノ酸が酵素の触媒活性や安定性に関与していると考え、部位特異的変異導入法によって他のアミノ酸に置換した変異体酵素を作製し、変異体酵素の活性や安定性について調べた。DS-1株由来COXの立体構造から、W22,W65,P128,P130,H144などが、FAD近傍に存在することがわかった。そこで、これらのアミノ酸をアラニンに置換した変異体酵素を作製することにした。また、分子シミュレーション解析によりP130をヒスチジンやアスパラギンに、H144をチロシンなどに置換すると安定性が向上する可能性が示唆されたため、これら変異体酵素発現用プラスミドも作製した。これらのプラスミドを、大腸菌に導入し、調製した菌体破砕液を用いて、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、COXを精製した。精製を行うことができたW22A,W65A,P128A,P130Aにおいて反応速度論的解析を行った結果、いずれの変異体においても野性型COXと比較して触媒効率が大きく低下していた。この結果から、これらのアミノ酸がDS-1由来COXの触媒活性に関与していることが示唆された。また、P130を他のアミノ酸に置換すると酵素が安定化することが分かった。
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