研究課題
酵母との複合バイオフィルム(以下複合BF)形成性を示すLactobacillus plantarum ML11-11から誘導した非凝集性変異株が、酵母との複合BF形成能を喪失し、細胞の負荷電が増大し、表層タンパク質量が顕著に減少していることをあきらかにした。接着因子の同定を目的に、変異株で減少している表層タンパク質に相当するタンパク質バンドを野生株の表層タンパクのSDS-PAGEより抽出して質量分析により解析したところ、いくつかの細胞内酵素が同定され、これらが乳酸菌の細胞内から表層に移行して酵母接着因子として機能している可能性が示唆された。一方、ML11-11など酵母接着性乳酸菌3菌株のゲノム解析の結果、特異なマンナン結合型タンパク質をコードする遺伝子をみいだした。当該遺伝子の産物が酵母接着因子の役割を担っているかどうかは今後の解析が必要だが、本研究によって、酵母との複合BF形成に関与する乳酸菌表層タンパク質に関して重要な知見を得ることができた。また、乳酸菌・酵母複合BFの利用に関しては、無殺菌の稲わらを担体として形成させた複合BFを利用してエタノール生産が可能なことをみいだした。農産廃棄物利用において複合BFを利用した新規発酵システム構築に向けて有用な知見を得た。さらに、乳酸菌・酵母・酢酸菌3菌種により形成されるBF系に関して、細胞培養用プレートの活用、3菌種を同時計測可能な平板培地の開発などにより、簡易で高精度の実験系を構築した。この系を用いて酢酸発酵を試みた結果、乳酸菌が共存する3菌種系で酢酸の生成が顕著に高まることを確認できた。3菌種系では、乳酸菌が生成する乳酸により酢酸菌のエネルギー代謝や糖新生が活性化するため酢酸生成が高まると考えられた。本研究によって、培養液底部に形成した乳酸菌・酵母複合BFと培養液上部に形成した酢酸菌BFを共役させる「二層バイオフィルム発酵システム」によって、糖を酢酸に効率的に変換可能なことを示すことができ、応用にもつながる重要な知見が得られた。
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