16SリボゾームRNA(rRNA)分子中の7-メチルグアノシン(m7G)修飾は、全ての真正細菌に存在し、その欠失は低レベルストレプトマイシン耐性の形質をもたらす。我々は、このm7G修飾がメチル化酵素「RsmG」によって触媒されることを明らかにしている。さらには、大腸菌においてはRsmGによるメチル化が未知の因子(タンパク質)により著しく促進をされることを見いだしている。このような因子は他の細菌では知られていない。本研究では、大腸菌のメチル化促進因子を同定すると共に、遺伝生化学的手法を駆使してその反応促進機構を明らかにすることを目指す。 昨年度までに、メチル化促進因子の精製を試みたが、精製過程における失活が著しく、電気泳動上で特定のバンドとして確認できるレベルの精製を達成することが困難であった。そこで、本年度は遺伝学的手法により、RsmGと相互作用する因子の探索を行うこととした。具体的には、m7G修飾欠損変異合わさることにより著しい生育阻害を示す変異の探索を試みた。染色体上のrsmG遺伝子を欠失させた株にインタクトなrsmG遺伝子を持つプラスミドを持たせて遺伝子機能を相補させておき、そこにトラスポゾンによりランダムな変異を導入した。得られたトランスポゾンライブラリーの中から、プラスミドを失う事が出来ない株を探索した。その結果、機能不明の遺伝子であるtasが候補として同定された。現在、発現タンパク質を用いてTasのメチル化促進活性について検討を行っている。
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