研究課題
タンパク質のリジンアセチル化は、バクテリアからヒトまで進化的に保存された翻訳後修飾として近年注目されている。バクテリアにおけるリジンアセチル化の役割として代謝酵素の活性調節、走化性、ストレス応答との関連が知られているが、翻訳制御における役割についてはまだ報告がない。本研究では、翻訳伸長因子EFTuを中心に翻訳制御におけるリジンアセチル化の意義を明らかにすることを目指している。前年度までに、枯草菌の主要なアセチル化タンパク質としてEFTuを同定し、枯草菌EFTuはアセチル化だけでなくスクシニル化修飾も受け、それらの修飾レベルが培地条件や培養フェーズによって大きく変動することを明らかにしている。本年度は、EFTuの修飾部位の同定と詳細解析を中心に行った。SILACを用いたアセチローム/スクシニローム解析により、MMグルコース条件とMMクエン酸条件におけるアセチル化とスクシニル化修飾の変動を網羅的に調べた。その結果、EFTuを初めとする翻訳関連因子やリボソームタンパク質のアセチル化/スクシニル化修飾レベルは培地条件によって変動しており、およその傾向として、グルコース条件でアセチル化が多く、クエン酸条件でスクシニル化が多い傾向が見られた。EFTuについて、GTPase活性を担うGドメインやtRNAとの相互作用ドメインにアセチル化およびスクシニル化修飾が見いだされ、各修飾部位は特徴的な変動パターンを示すことが明らかとなった。EFTuは必須タンパク質であるため、変異解析を行うにはコンディショナルな条件での評価系を構築する必要があり、そのような株を構築した。各修飾部位の単独変異体を作成して37℃、LB培地条件での生育を評価したが、これまでのところ顕著な表現型を示す変異体は見つかっていない。今後は多重変異体を作成して、37℃での生育のほか温度感受性や胞子形成についても調べていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
EFTuのアセチル化/スクシニル化修飾部位の同定に成功し、培地条件での変動を明らかにすることができた。EFTu変異解析のための評価系の構築に成功したので、今後残りの単独変異体や多重変異体を作成して、解析を進めていく。
これまでに単独変異株で表現型が見られていないので、多重変異株を構築して表現型を調べていく。同時に、各種培地条件、高温・低温での温度感受性、胞子形成など幅広い条件で調べる必要がある。
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Microbes Infect.
巻: 16 ページ: 6-16
10.1016/j.micinf.2013.10.005