研究課題/領域番号 |
24580134
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松井 博和 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90109504)
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研究分担者 |
佐分利 亘 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00598089)
松浦 英幸 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20344492)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ジャスモン酸 / ツベロン酸 / モノオキシゲナーゼ / P450 |
研究概要 |
ジャスモン酸は病傷害ストレス応答や生長を制御する植物ホルモンである。ジャスモン酸による遺伝子発現促進については,詳細な分子機構が明らかにされつつあるが,不活性化機構はいまだ明らかではない。最近の知見によるとシグナル本体として働くジャスモン酸とイソロイシンの接合体(JA-Ile)あるいはジャスモン酸が水酸化されることにより不活性されると考えられている。JA-Ileと異なり,ツベロン酸の生成機構は全く明らかでない。本研究ではツベロン酸生成機構の解明を目的とした。ツベロン酸の生成経路として,JA-Ile水酸化物の加水分解とJAの直接的な水酸化を想定した。JA-Ile水酸化酵素のCYP94B3と共発現が確認されているILL6は,インドール酢酸-アスパラギン酸接合体の加水分解酵素と配列類似性を示す。ILL6がJA-Ile水酸化物の加水分解酵素であると推定し,大腸菌による組換えタンパク質生産系を構築した。グルタチオンS-トランスフェラーゼとの融合蛋白質は可溶性タンパク質として生産された。得られたタンパク質をJA-Ileおよびその水酸化物と反応させたが,いずれの加水分解も確認されなかった。次にJAの水酸化酵素として注目したCYP94D1とCYP94D2をそれぞれ酵母においてNADPH-シトクロームP450レダクターゼと共発現させ,培地にJAおよびJA-Ileを添加してこれらの培養液中での水酸化を検討したが,水酸化は確認されなかった。酵母の無細胞抽出液中の組換えタンパク質は付加したHisタグを利用したウェスタンブロッティングによりいずれも検出されなかったことから組換えタンパク質が生産されていないことが考えられた。このため,CYP94D1とCYP94D2の遺伝子破壊株におけるツベロン酸量の解析を行うこととした。現在これらの遺伝子破壊株のホモ接合体の単離を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は,ターゲットとしたモノオキシゲナーゼであるCYP94D1とCYP94D2,ツベロン酸-Ileの加水分解酵素と推定したILL6の組換えタンパク質の生化学的機能解析を予定していた。本年度は予定通り,これらの酵素生産系を構築し,それぞれの機能解析を実施した。結果としては,想定した結果が得られなかったが,CYP94D1とCYP94D2については酵素の生産がおこなわれなかったことが活性が得られなかった原因であると考えており,次年度以降予定しているの変異体や過剰発現体の解析により結論を導くことができると考えている。ILL6についてはタンパク質の生産がおこなわれているにもかかわらず,活性が見られなかったため,想定していたツベロン酸-Ileの加水分解酵素ではないと考えられる。このため,以降の解析はCYP94D1とCYP94D2の機能解析に注力すべきと判断し,ILL6の変異体の解析は実施しないこととした。平成24年度の計画ではCYP94D1とCYP94D2遺伝子の変異体の単離も予定していた。シロイヌナズナの変異体のバンクよりCYP94D1とCYP94D2の欠損株の種子を購入し,CYP94D1についてはホモ接合体の単離に成功している。CYP94D2については,現在ホモ接合体の単離作業を行っているところである。CYP94D2のホモ接合体の単離作業のみが計画より若干遅れているが,次年度以降に挽回が十分可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
CYP94D1とCYP94D2の生理機能解析を中心として研究を進める。組換えタンパク質生産系の構築については,宿主との相性が悪く当初期待していた結果が得られなかったため,両ターゲット遺伝子の欠損株を用いてジャスモン酸類の内生量の変化を確認する。もし想定通りジャスモン酸の水酸化に関わっていた場合,ジャスモン酸シグナルの不活性化が不全となると予想されるため,ジャスモン酸に過敏になるものと推察される。このため,ジャスモン酸感受性の指標となる根の伸長阻害実験により変異体の評価を行う。変異体においてジャスモン酸に対する感受性の変化が見られた場合は,各変異体に欠損遺伝子を導入し,表現型が野生型に回復するかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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