超好熱性好酸性古細菌スルホロバスの中央代謝経路の鍵となる酸化還元酵素、グリセルアルデヒド(GA)酸化反応に関わる酵素(GAOR)とピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素(PFOR)を主な対象として、それらの構造と機能の相関を明らかにする当初の研究目的に加えて、超好熱性古細菌の解糖系で働くピロリン酸依存性ホスホフルクトキナーゼの結晶構造解析をおこなった。 PFORに関する研究では、PFORは従来の材料ではセレノメチオニン誘導体の結晶を得難いので、PFORのホモログ遺伝子の存在に注目し、発現系を作成し結晶化たところ、ネイティブ酵素、セレノメチオニン誘導体ともに良好なX線回折像を示し、立体構造決定に成功した。この構造をもとに、フェレドキシンとの複合体モデルを作成したところ、PFORの鉄硫黄クラスターとフェレドキシンの2個の鉄硫黄クラスターがほぼ等間隔で並び、電子伝達に好都合と思われたので、実際にPFORとフェレドキシンとの複合体の結晶化を試みたが、良好な結晶は得られなかった。 GAORについては、もとの菌体からの3種類のGAOR酵素(GAOR1、GAOR2、GAOR3)を精製し、それぞれがLMSのサブユニットからなるヘテロ三量体を構成単位としていること、GAOR2とGAOR3では、MSサブユニットは共通でLサブユニットが異なることを明らかにした。さらにこれらのGAORのMo、Feなどの金属含量、吸収スペクトル、反応特異性、を調べ、Moコファクターを結合するLサブユニットによって電子供与体のアルデヒド特異性が決まることが分かった。GAOR2の結晶構造から、ヘテロ三量体GAORのサブユニットの構成経路について、MSをスキャフォルドとして多様なLを統合することで酵素に多様性を付与することが推測された。
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