研究課題/領域番号 |
24580137
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
富田 武郎 東京大学, 生物生産工学研究センター, 助教 (50447364)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ロイシン / アミノ酸代謝調節 / シグナル伝達 / グルタミン酸脱水素酵素 / 転写調節 / タンパク質間相互作用 |
研究概要 |
本計画は、代謝が比較的シンプルであるT. thermophilusを用いて網羅的解析を行うことでロイシンの生体調節因子としての役割の全体像の解明を目指し、その分子機構の詳細を構造生物学的手法も用いて明らかにすることを目的としている。 今年度、ロイシンを感知する転写調節因子と予想されたTTC1871タンパク質についてin vitroにおける解析を行った。その結果、保存されたCys残基のAla置換体の解析からCys残基が酸化還元状態の感知のための役割を担っていること、またその標的遺伝子にカタラーゼなどの酸化還元ストレス応答タンパク質が含まれていることからTTC1871は酸化還元状態を感知するOxyRであることが明らかになった。TTC1871はこれまで知られているOxyRとは異なり、還元状態でDNAに結合する新しいタイプのOxyRであることが明らかになった。 一方、Stand-alone RAM (Regulation of Amino acid Metabolism) domainタンパク質であるSraAにタグを融合した組換え株を作製し、プルダウンアッセイによる相互作用パートナーを探索した結果、トリプトファン生合成に関与する酵素が得られ、同生合成系のフィードバック調節に関わっていることが示唆された。SraAはロイシンをはじめとしたアミノ酸にも結合することが示唆され、アミノ酸代謝調節において中心的な役割を担う可能性が示唆された。 Corynebacterium glutamicum由来のグルタミン酸脱水素酵素GDHの調節機構を調べることを目的として結晶化を行った結果、良質な結晶が得られ、高分解能での構造決定に成功した。活性中心内部にNADPHと推定されていた反応中間体であるalpha-イミノグルタル酸が結合している状態をとらえることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロイシンを感知する転写調節因子と予想されたTTC1871タンパク質については、当初予想したロイシン応答性因子であることを予想したが、これを支持する結果を得ることはできなかった。しかし、in vitroにおける詳細な解析からTTC1871はこれまで知られているOxyRとは異なり、還元状態でDNAに結合する新しいタイプのOxyRであることが明らかにすることができた。 また、アミノ酸結合タンパク質と予想されたStand-alone RAM (Regulation of Amino acid Metabolism) domainタンパク質に関するプルダウンアッセイの結果、トリプトファン生合成に関与する酵素が分子パートナーとして単離され、新しいアミノ酸シグナル伝達機構が存在する可能性が示唆された。 GDHの触媒作用の分子機構を探る目的でCorynebacterium glutamicum由来のグルタミン酸脱水素酵素の調節機構を調べた結果、アミノ酸が直接結合することによる活性調節機構は存在しないことが示唆されたが、CgGDHの高分解能での構造決定に成功した。活性中心内部にNADPHと推定されていた反応中間体であるalpha-イミノグルタル酸が結合している状態を同ファミリーの酵素において初めてとらえることに成功した。本酵素の反応機構の解明と、アンモニア同化機構の解明の基盤を得たといえる。
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今後の研究の推進方策 |
Stand-alone RAM domainタンパク質(SraA)はトリプトファン生合成酵素の調節を行う可能性とともにロイシン等多数のアミノ酸を結合し、それらの代謝調節にも関わる可能性が示唆された。今後は、SraAのトリプトファン生合成経路の調節における役割を解析するとともに、ロイシンを感知したときに結合する分子パートナーを探索することなどを通じて、ロイシンがどのような細胞内のシステムに調節因子として関与しているのかを解析していく。また、ロイシンによって分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素遺伝子が顕著な転写活性化を受けることがマイクロアレイ解析によって明らかになっているが、調節を司る因子を同定することによってロイシンシグナル伝達機構の足がかりを得るような方策も余裕があれば取りたい。 C. glutamicumのグルタミン酸脱水素酵素について反応中間体を初めてとらえることに成功している。今後、基質の1つであるアンモニア(またはそのアナログ)を活性中心に結合した結晶構造を得ることを通して反応機構を解明し、調節機構を解析する上での構造基盤を得る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ロイシンシグナル伝達機構やグルタミン酸脱水素酵素の解析の実験を行う。そのために、微生物培養用培地、タンパク質やDNAを調製したり、それらの活性の測定をするための試薬、器具類を大量に使用する。 酵素やタンパク質の結晶構造解析のために高エネルギー加速器研究機構のビームラインを利用する。そのための旅費を使用する。 研究成果の発表や研究の情報交換のために学会に参加する。そのための旅費を使用する。
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