研究課題/領域番号 |
24580137
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
富田 武郎 東京大学, 生物生産工学研究センター, 助教 (50447364)
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キーワード | ロイシン / アミノ酸代謝調節 / シグナル伝達 / グルタミン酸脱水素酵素 / 転写調節 / タンパク質間相互作用 |
研究概要 |
本計画は細胞内における代謝活動が比較的シンプルであるThermus thermophilusを用いて網羅的解析を行うことでロイシンの生体調節因子としての機能の解明を目指し、その背景にある分子機構を構造生物学的手法も用いて明らかにすることを目的としている。 今年度は、昨年度までにロイシンを含むアミノ酸を結合することが示唆されたタンパク質SraA (Stand alone RAM, A)についての解析を行った。昨年度までにSraAがトリプトファン生合成2番目の酵素であるTrpDと相互作用することが示唆されており、SraAがTrpDの活性調節を担っている可能性が考えられた。TrpDの組換えタンパク質を調製し、活性測定を行った結果、SraAおよびトリプトファン存在下で顕著にその活性が阻害されることが示唆された。また、SraAと相互作用するタンパク質をTrpDの他に幾つか見出した。 グルタミン酸脱水素酵素(GDH)の細胞内機能の解析のために、その調節サブユニットであるGdhAにタグを融合し、プルダウンアッセイを行った結果、新たに別のタンパク質が同定され、このタンパク質との機能相関や相互調節機構に関して解析を行っている。 Corynebacterium glutamicum由来のグルタミン酸脱水素酵素(CgGDH)に関しては、新たな調節機構を探ると同時に結晶構造解析を進めていた。新たな調節機構は発見されていないものの結晶構造決定に成功し、その高活性化機構に焦点をあて分子シミュレーションを用いた解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アミノ酸シグナル伝達因子の一つであると考えられるSraAの分子パートナーであるTrpDがSraAとトリプトファンにより活性阻害を受けることをin vitroの実験により示した。また、SraAが別のタンパク質とも相互作用することを示唆するデータを得ることができ、グローバル調節因子として機能する可能性を示した。グルタミン酸脱水素と相互作用するタンパク質を同定し、ロイシンのシグナルがアミノ酸代謝だけでなく別の代謝経路にも影響を及ぼしている可能性が示唆されている。 Corynebacterium glutamicum由来のグルタミン酸脱水素酵素(CgGDH)に関してはその高活性化機構に焦点をあてた分子シミュレーション解析が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
SraAとトリプトファンによるTrpDの活性阻害は細胞内代謝においては、フィードバック阻害機構の一部に組み込まれたものであると考えられる。今後、生合成経路の別の酵素との相互作用等も検討し、その機構の詳細を詰め、また結晶構造解析によりその分子機構を明らかにすることも目指す。SraAと別のタンパク質との相互作用に関してもその生理的意義を明らかにすべく、調節機構の解析を進めていく。グルタミン酸脱水素と相互作用するタンパク質に関しても同様に相互の調節機構の解析を進めていく。 Corynebacterium glutamicum由来のグルタミン酸脱水素酵素(CgGDH)に関してはその高活性化機構を解明すべく分子シミュレーション解析とそれを実証するような変異酵素解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度使用予定額のため。 実験を遂行するための消耗品類購入のため物品費を多く使用し、残りを主に研究内容発表および情報交換のために学会参加するための旅費に使用する。
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