研究課題
本研究は、高機能な分泌タンパク質を大量に生産可能な培養細胞系の樹立を最終目標とし、哺乳類細胞の小胞体からゴルジ体への輸送経路(初期分泌経路)に動員されるカルシウム結合タンパク質の生理機能の解明を目指した。本年度は、以下の実験を行った。1)EF-hand型カルシウム結合タンパク質ALG-2およびカルシウム依存性リン脂質結合タンパク質アネキシンA11は、小胞体からの順行輸送を担うCOPII小胞が出芽する領域ERES(endoplasmic reticulum exit site、小胞体出口部位)に動員されるが、これらのカルシウム結合タンパク質の発現抑制が、ERESの細胞内分布に及ぼす影響を解析した。具体的には、ヒト繊維肉腫細胞株HT1080を用い、中心体マーカーであるガンマ・チューブリンとERESマーカーであるSec16Aの分布を解析した。その結果、ALG-2およびアネキシンA11の発現抑制により、核近傍に集積しているERESが細胞全体に散在することが明らかとなった。2) 分泌経路のモデルタンパク質として汎用される、水疱性口内炎ウィルスtsO45株の糖蛋白質VSV G-tsO45を用いて、ALG-2とアネキシンA11が小胞体からゴルジ体への輸送に及ぼす影響を解析した。ALG-2あるいはアネキシンA11を発現抑制すると、VSV G-tsO45の小胞体からゴルジ体への輸送が促進された。よって、ALG-2とアネキシンA11は、小胞体からの輸送において、抑制的機能を担っている可能性が考えられる。一方、小胞体とゴルジ体を循環しているERGIC-53の局在を観察したところ、ALG-2あるいはアネキシンA11の発現抑制細胞では、ゴルジ体に存在するERGIC-53の割合が減少していた。これらの結果と前年度までの成果を考え合わせると、ALG-2がアネキシンA11をERESに動員することで、小胞体からの輸送小胞COPIIの出芽を調節している可能性が考えられた。
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