研究課題
細胞の余剰脂質を排出するABCGタンパク質の翻訳後制御機構は、ほとんど分かっていない。脂質恒常性の制御とその破綻としてのメタボリックシンドロームの解明には、細胞内の翻訳後機能制御機構を明らかにする必要がある。そこで、細胞内におけるABCGタンパク質の脂質排出を制御する新規の機構を明らかにすることで、生体の脂質恒常性制御の機構を解明することを目的として実験を行った。1、コレステロール合成関連タンパク群によるABCG1, ABCG4機能制御の解析コレステロール合成制御タンパク質(HMG-CoA reductase)をスタチンで阻害した際には、細胞内コレステロール低下に伴いABCG1, ABCG4によるコレステロール排出が減少した。一方、他のコレステロール合成制御タンパク質(Insig-1)の発現によっては、ABCG1の細胞内局在や活性には影響が無いことが明らかとなった。これまでのABCG1がコレステロール合成の制御にも機能する結果と合わせて、ABCG1によるコレステロール排出が統合的に制御されるモデルを示した。2、相互作用タンパク質によるABCGタンパク質機能制御リン脂質に組み込まれた多価不飽和脂肪酸が、ABCG1によって排出されてアポリポタンパク質E含有高密度リポタンパク質(LpE)を形成すること、さらに多価不飽和脂肪酸を含むLpEがLRP1を介して神経細胞の突起伸長を促進することを明らかにした。ABCG1はPKCによってリン酸化されることで、タンパク分解が抑制されてタンパク量が増え、コレステロール排出が増加することを明らかにした。リン酸化による翻訳後制御でABCG1が制御されていることを示した。
2: おおむね順調に進展している
当初年度計画に沿った研究を行っており、ほぼ予定通りに進行している。リン酸化によるABCGタンパク質の翻訳後制御についても明らかにできた。
平成26年度の研究成果をふまえて、研究計画通りに行う。ABCG1のリン酸化制御については、成果をまとめていく。NPC1L1によるABCG5//ABCG8活性制御と細胞膜脂質によるABCGタンパク質の活性制御について調べる。
ABCG5/ABCG8発現細胞の活性が不安定なため、モジュレータースクリーニングが少し残っており、その分の消耗品費が次年度使用額として残った。
各種ABCGタンパク質発現細胞を培養するための消耗品費と器具費、コレステロール排出活性を測定するための消耗品費として使用する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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