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2013 年度 実施状況報告書

動物細胞小胞体におけるタンパク質のジスルフィド結合形成機構

研究課題

研究課題/領域番号 24580141
研究機関東北大学

研究代表者

門倉 広  東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70224558)

キーワードジスルフィド結合 / 動物細胞 / 小胞体 / 品質管理 / JPDI
研究概要

ジスルフィド結合形成は、分泌タンパク質にとって立体構造形成上、重要な反応ステップである。哺乳動物細胞の小胞体内にはこの過程に関わると予想される酵素が20種知られている。その一つである、JPDIは、分子内に4個のチオレドキシンドメインと1個のJドメインをもつ。本酵素の生理的な機能を明らかにするために、平成25年度には前年度に引き続き、本酵素の生理的な基質の同定をすすめた。このためには、チオレドキシン様の酵素が、ジスルフィド結合の形成、還元、 異性化をおこなう際に、酵素と基質がジスルフィド結合で連結した中間体が形成することを利用した。本年度には新たにNEM処理したマウスの前立腺試料から、JPDIと基質の複合体を、精製した。更に、マススペクトル解析により、JPDIと複合体を形成しているタンパク質を、網羅的に同定することに成功した。また、免疫沈降法を利用することよって、同定したタンパク質の幾つかは、組織内で実際に酵素であるJPDIと結合していることを見出した。よって、哺乳動物の組織からPDIファミリータンパク質のレドックスパートナーを取ってくることができることがわかった。この成果を論文にまとめ、BBRC誌に発表した。
インシュリンは、分子内に3個のジスルフィド結合をもつ。インシュリンにジスルフィド結合を導入する酵素の同定を目指し、本年度は、前年度に引き続き実験条件を最適化した。目的の酵素の同定には、インシュリンにジスルフィド結合が導入される過程で形成される共有結合中間体を同定し、精製することが必要である。前年度までにインシュリンのプロ体を検出することには成功していいた。本年度は、条件検討の結果、インシュリンのプロ体だけでなく、分子量がきわめて小さく検出が困難であったインシュリンの成熟体も検出することが可能になった。これは、実験上の大きな進展である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、主に、2つのアプローチによって研究を進めている。
第1のアプローチでは、小胞体内のジスルフィド代謝に関与すると予想されているJPDIの生理的な基質を同定することによって、本酵素の生体内における機能を解明することを目的としている。本年度までに、NEM処理したマウスの精巣上体と前立腺の両方の組織試料から、JPDIと基質の複合体を、精製することに成功した。更に、マススペクトル解析により、JPDIと複合体を形成しているタンパク質を、網羅的に同定することに成功した。更に、同定したタンパク質の幾つかは、組織内で実際にERdj5と複合体を形成していることを見出した。この結果から哺乳動物の組織からPDIファミリータンパク質のレドックスパートナーを取ってくることができることがわかった。平成25年度中に、この成果を論文にまとめ、BBRC誌に発表した。よって、JPDIの基質の同定に関しては、研究はきわめて順調に進んでいると考えている。
第2のアプローチでは、インシュリンと共有結合中間体を形成する酵素をインシュリン産生細胞から精製することにより、インシュリンにジスルフィド結合を導入する酵素を同定することを目的にしている。実際に実験を進めてみると、免疫沈降でタンパク質を回収することも、タンパク質をウエスタンブロッティングで、検出することも困難であった。この原因はインシュリンそのものが極めて小さな分子であり、かつ、血液中で極めて重要な働きをするタンパク質であるため、このタンパク質に対する抗体がそもそもできにくいことが原因と考えられる。更にインシュリンのプロ体を認識できる抗体は成熟体を効率よく認識できないという問題も生じた。以上のような理由から、各実験ステップの条件を最適化する必要が生じたため、その点では実験が遅れている。しかし、平成25年度までに両問題とも解決することに成功した。

今後の研究の推進方策

1.JPDIの生理機能の解明
(1)JPDIを欠損する細胞を用いたJPDIの生理機能の解析
JPDIの生体内に於ける具体的な機能を解明する目的で、各基質候補タンパク質の生合成過程を、パルスチュイス実験等により、野生株とJPDI欠損細胞で、調べる(JPDI遺伝子欠損マウス線維芽細胞は作製済)。このような方法によって、JPDIの欠損下、基質に生じる影響を詳しく解析することによって、JPDIの機能を明らかにする。また、JPDIのもつ4個のチオレドキシンドメインの役割分担を調べる為に、各チオレドキシンドメインの活性中心モティーフ(CXXC)に点変異を導入した変異体を作成し、JPDI上のこのような変異によって、基質タンパク質の生合成過程にどのような影響が生じるかも調べる。
2.インシュリンと複合体を形成する因子の同定および当該因子がインシュリンの生合成に果たす役割の解明
平成24年度と平成25年度には、実験条件の最適化が必要であった。平成26年度には、インシュリンと複合体を形成する因子の同定を進める。この実験には、マウス膵臓β細胞由来の培養細胞株MIN6を利用する。目的の因子が得られたら、当該因子がインシュリンの生合成に果たす役割を解明するために、当該因子の発現をsiRNA法等で抑制した場合の影響をパルスチェイス実験により調べる。

次年度の研究費の使用計画

先述したように、上述のアプローチ2では、予想外の実験条件の検討が必要になりました。このため、当初予定していた実験が行えなかったため、平成26年度への繰越金が生じました。
先述したように、実験条件の検討により上記の問題点は解決したので、平成26年度には、平成25年度に行えなかった実験と当初平成26年度に予定していた実験の両方を進める予定です。これらの実験には消耗品としては、汎用の薬品や器具の他、様々な基質候補タンパク質のcDNAをクローン化し発現させるために必要となる、化学合成オリゴヌクレオチドが必要になります。更に、消耗品費は、タンパク質の検出に必要な抗体や、遺伝子を動物細胞にトランスフェクションするための試薬、動物細胞の培養や維持に必要な試薬や器具の購入にも、使用します。また、パルスチェイス実験に必要な、放射性アミノ酸も購入します。更に、研究成果を学会等で積極的に発表し、その場での議論を研究の発展に生かしたく、研究費は国内旅費、外国旅費としても利用したいと考えております。その他、論文発表のための費用を計上しています。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Identification of the redox partners of ERdj5 /JPDI, a PDI family member, from an animal tissue.2013

    • 著者名/発表者名
      Kadokura, H.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 440 ページ: 245-250

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2013.09.063.

    • 査読あり
  • [学会発表] 哺乳動物細胞小胞体に局在するERdj5(JPDI)の生理的基質候補タンパク質の網羅的解析

    • 著者名/発表者名
      門倉 広
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 発表場所
      明治大学生田キャンパス
  • [備考] 東北大学研究者紹介

    • URL

      http://db.tohoku.ac.jp/whois/detail/0e7d0c63988511d969d32c13b37c77cd.html

  • [備考] 東北大学大学院生命科学研究科 協力講座 紹介

    • URL

      http://www.lifesci.tohoku.ac.jp/teacher/h_kadokura/

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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