研究課題
タンパク質のユビキチン化は、様々な生命現象の制御と恒常性の維持に必須な翻訳後修飾である。どのタンパク質にユビキチンを付けるのか、その選択性を決めるのはユビキチンリガーゼである。複合体型ユビキチンリガーゼとして知られるSCF型ユビキチンリガーゼは、基質認識サブユニットであるF-boxタンパク質を入れ替えることで様々な基質に対応する。ヒトでは約70種類のF-boxタンパク質が存在するが、基質が分かっているものは半数にも満たない。本研究は、F-boxタンパク質の基質を解明するための手法を開発し、機能未知のF-boxタンパク質の基質を見出すことを目的とする。ユビチキン化タンパク質は、多くの場合プロテアソームにより分解されるために細胞内の存在量が少ないか、細胞内に存在する脱ユビキチン化酵素によりユビキチン鎖をはずされてしまうため、細胞内にユビキチン鎖が付いた状態で存在する量は極わずかである。そのため、過剰発現させたユビキチンリガーゼのユビキチン化基質を同定することは困難であった。本研究ではポリユビキチン結合プローブTR-TUBEとユビキチンリガーゼを細胞内に共発現させることで、単離したい基質のユビキチン鎖を細胞内で安定に保つ系を開発した。TR-TUBEを免疫沈降することで基質タンパク質を濃縮し、トリプシン分解の際生じるユビキチンシグニチャーを認識するdiGly抗体で単離したペプチドを質量分析により解析することで、効率よく基質タンパク質及びユビキチン化部位の同定をする事が可能となった。この系を用いて、多くの組織や細胞に広く存在するが機能未知であったFBXO21の基質の同定を行った。その結果、核に存在するアセチルトランスフェラーゼp300や癌抑制因子Rb1と結合することが知られているEID1とスレオニンtRNA合成酵素TARSが基質であることを明らかとした。
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Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 112 ページ: 4630-4635
doi: 10.1073