研究課題/領域番号 |
24580153
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
小林 英城 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, 主任研究員 (40399564)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | セルラーゼ / 超深海 / ヨコエビ / 無脊椎動物 / 消化酵素 |
研究実績の概要 |
小笠原海溝から採取した超深海性ヨコエビについて、多糖分解酵素の活性を確認した後、セルラーゼの精製を行った。セルラーゼの酵素学的性質について検討した所、マリアナ海溝由来のカイコウオオソコエビセルラーゼとは、至適温度とpHが異なっているが、不溶性セルロースへの反応性が同じである事が分かった。小笠原海溝由来のセルラーゼもまた、不溶性セルロースの糖化に有用である事が分かった。さらに系統解析の結果、両方のヨコエビは非常に近縁であった。また平成25年度、RNAの塩基配列決定データより、セルラーゼ遺伝子の検索を行ったが、セルラーゼ遺伝子を含め多糖分解酵素遺伝子は未検出だった。そこで、小笠原海溝由来の超深海性ヨコエビよりゲノム遺伝子を抽出し、次世代シーケンサーを用いてゲノム遺伝子配列決定を行った。しかしながら、ゲノム遺伝子配列からもセルラーゼ遺伝子およびその他の多糖分解酵素の遺伝子は見つからなかった。残ったRNAを用いて、塩基配列決定を行っている。また、海岸性のヨコエビ”ハマトビムシ”についてもRNAを抽出、配列決定を行い、多糖分解酵素遺伝子の有無について検討を行っている。その結果、ハマトビムシも多くのセルラーゼを持っている事が明らかとなった。本結果から、セルラーゼクローニング用のPCRプライマーが設計できると期待している。 なお、本結果は平成26年度日本農芸化学会大会、生物工学会の国内学会、およびMIE Bioforum 2014にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、セルラーゼ遺伝子の探索を行っているが、小笠原海溝由来ヨコエビから抽出したRNAから遺伝子配列を決定することは困難だと考えている。そこで、同じ端脚類のハマトビムシからRNAの塩基配列決定を行い、そのRNAデータから糖質分解酵素遺伝子を検索している。その配列を元に、小笠原海溝由来ヨコエビゲノムからPCR法にて遺伝子の取得を行う予定である。したがって、直接的なクローニングでないこと、イントロン等があった場合、再構成が必要な事が考えられるため、やや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在塩基配列決定を行っている小笠原海溝由来超深海性ヨコエビRNA塩基配列データより、セルラーゼ遺伝子の配列を抽出する。抽出したセルラーゼ遺伝子配列を元に、RNAから合成したcDNAライブラリーより、セルラーゼ遺伝子のクローニングを行う。同様に、ハマトビムシ多糖分解酵素遺伝子配列を元に、cDNAライブラリーよりクローニングを行う。またクローニングしたセルラーゼ遺伝子について、大腸菌での発現を試み、酵素活性がヨコエビ由来の性質と同等か、検討を行う。さらに、本セルラーゼの大量発現のための各種宿主-ベクター系を用いて、条件検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度、名古屋議定書の検討が進んだため、発効を見通し、工学利用が困難になるマリアナ海溝のカイコウオオソコエビから、日本EEZ内のカイコウオオソコエビに変更して、セルラーゼ遺伝子の同定を行う必要が生じた。その結果、当初の計画に遅延を来した。
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次年度使用額の使用計画 |
日本産カイコウオオソコエビよりRNAの抽出に成功し、その塩基配列決定も行っている。また、いくつかのセルラーゼ候補遺伝子も同定している。さらにハマトビムシを参考とした検討中のセルラーゼ遺伝子取得も行う予定である。これらセルラーゼ遺伝子の全長取得、クローニング、および大量発現のための宿主-ベクター系の購入のために使用する。また、生産した酵素について、工業化検討のため、生産量や酵素学的性質に必要な試薬、消耗品の購入に使用する。
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