小笠原海溝から採取したカイコウオオソコエビのRNAシーケンスデータ(以下RNAseq)を元に、セルラーゼ配列情報を検索した。その結果、7本のセルラーゼ遺伝子候補を見出した。しかしながら、カイコウオオソコエビが保持しているセルラーゼは一種類であり、またβグルコシダーゼも保持しているため、情報学的なコンタミネーションが起きた可能性がある。そこで、これらセルラーゼ遺伝子情報が正しいか否かを検討するため、RNAseqデータ内のセルラーゼ配列の増幅およびクローニングを試みた。7セットのプライマーを作成し、カイコウオオソコエビゲノムまたはRNAより作成したcDNAをテンプレートとして、PCR増幅を行った。その結果、約2本のPCR増幅産物の取得に成功した。2本の増幅断片は予想サイズとは異なっていたが、イントロンやRNAseqの誤り等を考慮し、クローニングを行い、断片の塩基配列を決定した。しかし、RNAseqから得られた塩基情報とシーケンス結果は異なっていた。情報上のコンタミネーションが起きたと予想された。そこで、プライマーをそれぞれ入れ替えて、再度PCRを試みたが、有意なDNA断片の取得には至らなかった。なお、RNAseqで取得した配列の中には、連結可能な配列も存在したが、PCR増幅には至らなかった。そこで、RNAseqデータをアセンブルする以前のシーケンスデータ(FASTQファイル)より、プライマー情報を得てセルラーゼの取得を行っている。カイコウオオソコエビのように既にRNAが分解している場合、アセンブリされた塩基配列情報よりも次世代シーケンサーから得られたシーケンスデータの方が目的遺伝子の取得には有利であるということがわかった。酵素のような遺伝子資源を得る場合、RNAseqのデータよりもシーケンスデータを元にして取得を行う実験系を確立したいと考える。
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