研究概要 |
【目的】ナラ枯れは、カシノナガキクイムシがナラ枯れ病原菌を媒介することによって発生する。 本研究では、微生物の物質生産能力に着目し、ナラ枯れ病菌抑制物質をナラの木に内生する菌類の培養物より探索を行った。すなわち、野外でナラ枯れ罹病木を採取し、表面殺菌後、植物体に内生する菌類を分離し、その菌類の代謝産物から、ナラ枯れ病菌に対する生育抑制物質として、新しいサイトスポロン E の類縁物質を明らかした。 【方法と結果】ナラ枯れ罹病木より糸状菌 29 株を分離し、それぞれの培養物について、ナラ菌に対する生育阻害活性試験を行った。その結果、糸状菌 TT-10 株に阻害活性が見られたため、本菌の生産する活性物質を明らかにすることとした。そこで、TT-10 株の大量培養物について、その培養物のメタノール抽出物について、活性試験と TLC 上での挙動を指標に各種カラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物 1~5 を単離した。次に、それぞれの化合物の NMR や MS データを用いた構造解析の結果、 1, 3, 4, 5 は既知のインテグラシン A、サイトスポロンA、N、サイトカラシン類であった。一方、化合物 2 は、分子内に ガンマ - ラクトンを有するサイトスポロン E の新しい誘導体であった。また、活性試験の結果、化合物 2 やサイトカラシン類がナラ枯れ病菌に対する生育阻害抗菌活性を示した。
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