研究概要 |
イネOryza sativaは、植物ホルモンのジベレリン以外にも、モミラクトン、フィトカサンといったフィトアレキシンを含む多様なジテルペノイドを生合成しており、著者らの研究グループは、labdane関連のジテルペン環化酵素遺伝子を中心に酵素遺伝子を取得・特徴付けを行ってきた。本課題では、それらジテルペン環化酵素遺伝子の進化的知見を得るために、野生イネO. rufipogonを利用して、インフォマティクスならびにcDNAクローニング・組換えタンパク質を用いた機能解析を行ってきている。O. rufipogonのインディカ型については平成24年度解析したが、平成25年度においては、そのジャポニカ型について同様の解析を行った。その結果、栽培イネO. sativaと同様の生合成遺伝子(OsCPS1,2,4;OsKS1,4,5,6,7,8,10等)がそのゲノムにみられ、フィトアレキシンであるモミラクトンとフィトカサンの生産も確認できた。さらに系統樹解析により、O. sativaとO. rufipogonの間では、ジャポニカ型とインディカ型でそれら遺伝子の配列は相同性が高く、栽培イネと野生イネの違いよりもジャポニカ型とインディカ型の系統の違いの方が大きいことも明らかになった。以上の結果は、多様なジテルペン環化酵素遺伝子群は、栽培・育種によって形成されたわけではなく、野生イネにおいて既に存在しており、自然環境下で進化して獲得したものであることを示唆した。今後は、別の野生イネを材料として、さらに進化的知見を得ることを計画している。
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